A按摩・マッサージ(血液・筋肉から内臓の機能まで守備広範囲の療法)

 私たちは、からだのどこかに痛みがあったり、しびれるとか、だるいとか、なんとなくふつうでない感じがするときは、その部位に手を当てたり、もんだり、さすったりします。これが“手当て”という言葉のもとです。按摩、マッサージ、指圧といった手を使う療法は、つまり手当ての1つです。この手技療法は世界各地にあり、それを東洋的な考え方にもとづいて体系化したのが按摩であって、西洋で発達したのがマッサージです。

 按摩の按は圧すこと、摩は摩擦の摩でさすること、なでることですが、これに体操療法を加えたのが手技療法です。

疲労、ストレスはもとより五臓六腑の調整もこれでOK

症状別指圧・按魔法

頭痛―頭痛のツボは頭の天辺の百会。百会の近く3センチあたりにある通天は、天にも通じるほどよく効くツボです。

 この2つのツボを押さえ、軽くもみほぐします。また、後頭部が痛いときは、天柱が名穴です。

疲れ目―目が疲れてくると、頭痛と頭重がいっしょにくるのがふつうです。目だけの疲れというのはありません。そこで天柱、風池、肩井(けんせい)、大 、以上4つのツボを指圧します。これで疲れ目はきれいになおります。ついでに説明しておきますと、肩井は肩こりです。大 というのは、背中の第1胸椎 突起と第2強椎 突起との間の外側4センチのあたりです。

冷え性―ツボは背中にある厥陰。厥というのは血のめぐりの悪いことです。それから膈 、三焦 、腎 、志室、膀胱 、胞盲を合わせて押さえます。

肩・首すじのこり―肩がこるというときは、必ず後ろ頭から首すじにかけて非常にだるい感じをともないます。頭がなんとなくぼんやりして、後ろの首すじがこってきます。こんな時は、天柱、風池のツボを刺激します。この2つのツボは、首すじの骨、枕骨といって頭の入口、その両側に筋があります。後ろが身の毛の生え際にある筋、そのすぐ外側のところ。これを点ではなく、人差し指と中指、薬指くらいでひらがなの「の」の字を書くようにもんでください。

寝ちがい―寝ちがいは、痛くはれている間は軽く冷やして安静にします。熱やはれがひいてから治療にはいります。ツボは風池、天柱、肩井、気舎、完骨の5つです。

五十肩―五十肩の特効ツボは肩先にある肩?、肩甲部中央の天宗、腰の腎 、鎖骨下の中府、腕の臂臑の5つで、とくに肩?は手が痛くて動かせないときのツボ、臂臑は腕の痛みに効くツボです。また手が後ろへ回らないときは腎 、手が横や前に上がらないときは肩?、臂臑、反対側のほうへ上げらないときは中府を中心に処置して下さい。また痛みには灸治療がよく効きます。

腰痛―腰痛に効くツボはおなかのほうに集中しています。まず、みぞおちとおへその真ん中にある中 。おへその両側にある天枢、横柄の帯脈、この3つです。もう1つ、意外に思うかもしれませんが、足のふくらはぎのふもとにある承山も不思議によく効きます。これは太陽膀胱経をいう経路を見ればわかることですが、これが腰痛のツボのポイントだからです。

ぎっくり腰―ぎっくり腰は、すぐツボ療法をやってはいけません。安静にして、できるだけその部分を冷やすことが第1です。暖めてはいけません。1日安静にしていると動けるようになりますから、そこでツボを対象に、手のひらで、小さな「の」の字を書きながら軽くもむようにします。ぎっくり腰になるとツボの周囲の筋肉が硬くなりますから、その緊張をとるためで、もむといっても手のひらで軽く圧す程度にしてください。またぎっくり腰はおなかにも異常が出てきますから、天枢、関元を同じ要領で軽くもみます。同時に足の承山も軽くもむように圧します。

食欲不振―食欲不振はすべて病気にともなって起こる症状ですから、一応、その原因を探る必要があります。そのうえで特別に病気がない場合の食欲不振なら、ツボ療法は効果的です。この場合の治療の要点は、まず精神的イライラをとり、胃腸の消化吸収をさかんにし、体内の余分なガスを取り除くことが大事です。そのためには、背中、おなか、足のそれぞれのツボに対し指の刺激とマッサージがよく効きます。背中のツボは第9、第11、第12各胸椎の下、両側4、5センチのところにある肝 、脾 、胃 の3つがポイントです。つぎにからだの前面ではのどもとの気舎もいの症状に効果があり、中 は消化吸収を助けるツボとして重要です。位置は、おなかの正中線(からだの中央をたてに通る垂直線)上で、みぞおちとおへその真ん中にあります。また、足ではむこうずねのすぐ外側にある三里も食欲不振には効き目があります。

消化不良―治療は、まずあお向けに寝かせて、おへそのまわりのツボ、中 、 門、天枢を呼吸に合わせて、息を吐いたときに力をいれて指圧、またはマッサージします。次にうつぶせにして肝 、胃 を上から順に、おなかの場合と同じように呼吸に合わせてゆっくりと行ないます。上側にある温溜、胃に関係のある足のツボ、足三里をそれぞれ3〜5回ずつ指圧します。

生理通・生理不順―生理不順のツボは、腰のあたりに集中しています。まず志室、位置は腰の第2腰椎 突起の下から外側へ約10センチのところ。あとはひざの内側(ひざの上)7センチの所にある血海、もう1つは足の内くるぶしから上へ7〜8センチの所にある三陰交、この3つへの刺激が効果的です。

 東洋医学の考え方では、体表面と体内の五臓六腑とは、それぞれ経路という連絡路で結びついており、ツボを刺激することで、体内のエネルギーの流れをととのえようというものです。

 マッサージという言葉はフランス語ですが、もともとはギリシャ語やアラビア語の「こする、もむ」などという言葉だといわれています。マッサージはヨーロッパの近代学の中で発達し、明治になってから日本に入ってきた手技療法です。

 按摩、マッサージ、指圧に共通している点は、いずれも体の表面から圧を加えて触覚や圧覚を刺激することで、神経や血管、筋肉に直接作用し、反射的に生体反応をおこさせることです。指圧では圧すことが主ですが、按摩とマッサージでは、圧の方向を変えたり、圧している時間を長くしたり短くしたりするなど、いろいろなやり方があります。

家庭でできる基本的なテクニック

 ここでは家庭で、家族がお互いに、手軽にできる基本的なやり方を紹介しましょう。

〔軽擦法〕(なで、さする方法)

 これは手技療法の基本です。手のひらを相手のからだにぴったり当て、軽く圧を加えるわけですが、按摩ではからだの中心部から手足のほうに向かって行ない、マッサージでは反対に手先、足先から心臓のほうに向かって行なうのがふつうです。

 だいたい5キログラムぐらいの力で圧しますが、家庭にあるヘルスメーターなどを圧してみて、5キログラムの力を身につけておいてください。

 マッサージは、マッサージするからだの面積によって、手のひら全体でなでたり、親指だけでなでたり、またほかの四指を合わせてなでたりします。

〔揉捏法〕(もむ方法)

 皮膚や関節をもむ方法で、一種の筋肉の他動運動ともいえます。マッサージする体の部分、とくに筋肉をしっかりつかみ、指先を動かさずに、ひじ・手首を動かして、手のひら全体、または各指に腹全体で、輪状に動かしてもみます。


〔振せん法〕(ふるわす方法)

 手のひらや親指を皮膚へ当て、圧しながら振動を与える方法です。専門家は1秒間に30〜40回くらいの振動刺激を与えることができますが、素人はなかなか細かいリズミカル運動はできません。第1やる人が疲れてしまいます。いまは性能のよいバイブレーターが市販されていますから、これを利用するのも賢い方法かもしれません。

〔叩打法〕(たたく方法)

 両手または片手で、リズミカルにからだを軽くたたく方法です。親指を外に出してゆるく握ったこぶしや指先、指全体を使って、両手で交互に、軽く、調子よくたたきます。ふつう小指側を下にしてたたきますが、手の甲を下にしてたたくこともあります。1秒間に3〜14回の振動刺激が適当です。

 軽くたたくと神経や筋肉の機能を高めますが、強く長時間たたいていると、かえって機能をおさえ、逆効果になります。

〔運動法〕

 按摩やマッサージのあと必ず行ないます。マッサージ、按摩を行なったからだの部分と関係ある関節を充分運動させる方法です。とかく人間は成人すると、全身の関節が十分に動くという機会が少ないものです。たとえば肩関節を肩の高さより上に上げる機会は非常にまれですし、股関節を十分に開閉上下させることもまれです。ひざの屈伸も少ないものです。

 したがって、血液の循環は悪くなり、からだの節ぶしがこわばり、これが痛みや神経痛、リウマチにつながります。マッサージや按摩をうけたあと、手足を曲げのばす運動をすると、体が軽くなり、気分もさわやかです。やった人が相手の手足をリズミカルに運動させる方法もあります。

こんな病気・症状に効果がある
○内臓障害
○(胃腸・肝臓)
○四十肩、五十肩
○疲労回復
○頭痛
○胃病、腰痛
○足の疲れ

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