遊び・体験活動の必要性について
         福岡教育大学・横山正幸

1.子ども達は、皆、大きな発達の可能性をもって生まれてくる
皆、子どもは自立しようとしている←子育ての目標は子どもの自立を支援すること

2.子ども達は、今、幸せなんだろうか
●思いっきり暴れまわりたい
     :小学5、6年生 44.5%(連合生活研究所 1997)
●むしゃくしゃして、物や道具や建物を傷つけたり、壊したりすることが「よく」「時々」ある
     :小学5年生 25.2%(北九州市教育委員会 2000)
●友達にイライラしたり、むかつくことが「よく」「時々」ある
     :小学5年生 82.2%(北九州市教育委員会 2000)
●生まれなければよかったと思うことが「よく」「時々」ある
     :小学5年生 38%(盛岡市教育研究所 1997)
●生きているのがイヤになるという感じが「よく」「時々」ある
     :小学6年生 40.0%(福岡県青少年課 2000)
●朝、食欲がない
     :小学5、6年生 46.2%(連合生活研究所 1997)
●夕ご飯を食べたくないことが「よく」「時々」ある
     :小学4年生 71.1%(宗像市教育委員会 1991)
●よく眠れないことが「よく」「時々」ある
     :小学4年生 84.6%(宗像市教育委員会 1991)
●自分は何をやってもダメな人間だという感じが「よく」「時々」ある
     :小学6年生 48.4%(福岡県青少年課 2000)

3.なぜ子ども達はこんなにも悶々とした、精神衛生のよくない状態にあるのだろうか
その一つの、しかし最も大きな原因は子どもの生活から遊びがなくなったことである
子どもの遊びには、楽しさを与えてくれると同時に次のような発達的意味がある
 1.社会性、協調性、人間関係能力などを育む
 2.生きた知識、生活の知恵を育む
 3.体力・運動能力・器用さを育む
 4.自主性、耐性、創造性、思いやりの心などを育む
 5.心の緊張を解消し、精神衛生をよくする
  この遊びが今やほとんどなくなってしまった
 幼児教育の権威、平井信義の言葉
 「当時(1947年頃)の子どもたちのいきいきした活動を思い返すと、昨今の幼稚園や保育所の子どもたちの姿は、じいさんかばあさんのよう に 思えることさえある。」(1989「新しい幼児教育のために」)
  1960年頃から子ども社会は急速に崩壊していった。(夢遊病の子ども達、巣ごもりしている子ども達)
  1.仲間・・・大型の異年齢集団→小型の同年齢集団  2.時間・・・比較的長時間→きわめて短時間
  3.場所・・・屋外→家の中、家の庭など          4.内容・・・集団的活動的遊び→個人的、非活動的遊び

4.遊びの衰退は子どもの発達にどんな影響を及ぼすのだろうか
 日々の生活が楽しくないだけでなく次のことが達成されない。
  1.社会性、協調性、人間関係能力が育たない  2.自主性、耐性、創造性、思いやりの心などが育たない。
  3.体力・運動能力・器用さが育まれない      4.生きた知識、生活の知恵が育まれない
  5.心の健康、精神衛生がよくない


5.子ども達はなぜ遊べなくなったのだろうか

最大の問題は、子どもの遊びに対する大人の無理解
 1.遊ぶ友達がいない ← 幼い頃からの塾、お稽古ごと通い  2.遊ぶ時間がない ← 幼い頃からの塾、お稽古ごと通い
 2.遊ぶ場所がない ← 空き地がない、車の危険性       4.遊ぶ意欲の低下 ← 過保護、過干渉的な育て方
 5.遊び方がわからない ← 異年齢の子ども社会がなくなった
  ※戦前の小学生の知っていた遊びは約4000種類 ⇒ 現在約20種類

6.瞳を輝かせ、元気に遊ぶ子ども達にするにはどうしたらよいのだろうか

 
1.親や地域の人が子どもの遊びの大切しっかり理解し、遊びを奨励する
 2.親が子どもを過保護にしたり、子どもの行動に干渉し過ぎないようにする
 3.親自身が近所の子どもをもつ人と積極的に交流するようにする
 4.何か活動するとき、地域のすべての子ども達を対象に行わなければならないと考えない。多少とも積極的に参加しようとしている子  どもをターゲットにして行う
 5.大人主義の活動ではなく、子ども達の手によって運営される活動にする
  そのためには、まず、実践力をもった子ども達のリーダーを育てること。そうしたリーダーを育てるには多少とも積極的に何かしようと  している子ども達に運営を段階的にまかせるようにする。まかせるにあたっては「教え」て「まかせ」、「見守る」ことを鉄則とする。す  なわち、大人は手を出し過ぎないことである。
 6.行事中心の活動ではなく、日常活動を大切にする。
 7.子ども会などは全体活動中心ではなく、班(グループ)活動を中心に行う。
 8.ボランティアがプレイ・リーダーとなり、子ども達に遊び方を教える。但し、子ども達が自分達で熱中して遊ぶようになったら、プレイ・  リーダーはそっと去る。いつまでも一緒に遊ばない。
 9.遊びを仕掛けるにあたっては「もの」をあまり与えない
10.子ども達が遊びたくなるような環境を用意する
 ◆地域の人々がアンビシャス広場の意義を理解し、実践してみる
 ◆昼休みの時間を積極的に活用して、学校の中での遊びを活性化する
  例:宗像市自由ヶ丘小学校の校庭ボランティアの導入による遊びの活性化


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