”やる気と思いやりを育てる”

スキンシップという言葉を日本に紹介された平井先生は、「やる気と思いやりを育てる」子育てを提唱され、日本の保育史に大きな影響を与えられました。平井先生は「心の基地はおかあさん」のはじめで、次のように語っておられます。

「私は40年近く、相談事業を行ってきました。相談事業というのは、ご両親、とくにお母さんから子育てについてご相談を受けて、それにお答えするという仕事です。初めは小児科医をしていましたから、からだを中心とした子育てについてのご相談、とくに扱いにくい問題のご相談を受けていました。子どもの年齢は、乳幼児が多かったのは当然です。

ところが、そうしたご相談を受けているうちに、家庭の人間関係、つまり家族関係にいろいろな問題があることが気になり始め、子どものからだの問題ばかりでなく、心の発展とそのゆがみに私の興味が移ってきました。それが、心の衛生−精神衛生と呼ばれているものなのです。心を健康に育てるにはどうしたらよいか、心にゆがみを与えないように予防するにはどうしたらよいか、すでにゆがみをもってしまっている子どもをどのように治療したらよいか−ということが精神衛生の内容となります。しかも、心の不安が、子どものからだにも影響していることがだんだんにはっきりしてきました。それが心身症と言われるものです。健康な心に健康なからだが宿るとも言えるわけです。

そのほかに、お母さんやお父さんを悩ませるような子どもの行動上の問題がたくさんあります。引込み思案、わがまま、反抗、落ちつきのなさ、気力のなさ、勉強しないで遊んでばかりいることなど。お母さんやお父さんにとっては気になることでしょう。いろいろなくせもあります。お寝小に困っているお母さんもいるでしょう。

思春期になると、登校拒否、家庭内暴力、ノイローゼ、精神病や、家出、非行などの厄介な問題が起き、お母さんやお父さんを不幸のどん底に落としてしまうことさえあります。しかし、学童期に早く対策を立てていれば、短期間でなおったのに、と思い返される例が多いのです。

ところが、子どもの発展について勉強していないお母さんやお父さんは、発達のゆがみについて気づいていないばかりか、私たちの目から見ると心配な子どもであるのに「よい子」と思い込んでいることが少なくないのです。意外にも、おとなしかったり、すなおな子ども、親の言うことをよく聞く子どもは、心にゆがみが生じていることが少なくないのです。順調に発達している子どもは、しばしばお母さんやお父さんを悩ますもので、例をとれば「反抗」です。それ故に、発達心理学では、二歳から三歳にかけて「第一反抗期」に入ることを強調しています。小学校23年生では「口答え」が多くなるものです。」

このフォーラムでは、平井先生が提唱された「やる気と思いやりを育てる」子育てを中心に子育てを考えます。また、いろいろな先生方のアドバイスと、子育てを体験された先輩のお母さん方、子育て奮闘中のお母さん方の体験談、意見、考え、アイデアなどを掲載し、21世紀の上手な子育てを考えていきたいと思います。

   子どもは大空を飛び交う鳥のように自由に生きる


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