トイレそうじで美人になる

香川県 多田律子

 「トイレには女の神様が住んでいて、トイレをきれいにおそうじすると、美人になれる」こんな話を小学1年のころ、母から聞き、小さくても美人という言葉に弱いのは女。神様がいるかぎり粗末にはできないと思うようになった。家ではその頃よりそうじしていた。小学校では、中学年より回ってくるトイレのそうじ当番、当時の学校のトイレは目が痛くなるほどくさくて、でも母のその言葉のおかげで、いやだナァと思うことのなく、それどころか美人になるんだお願いしますよ、と一生懸命したのを覚えている。中学生ごろになって、美人になれるという本当の意味がわかるようになっても、やっぱり神様の存在を信じ、いつの時代もトイレそうじは私の役目で、私もかれこれ32歳2児の母。2人の息子に「男前になれるヨ」と言って通じるかはさだかではないけれど、せめてトイレそうじはいやがらないでできるように言い聞かせたい。