「五歳四ヵ月になる長男ですが、とても神経質でからだがとても弱々しいのです。心配と申しますのは、幼稚園に通っているのですが、月曜日になると熱が出るのです。と言うのは、六月ごろから、毎週日曜日にしたことを、月曜日に絵に描いたり、先生にお話しすることになったのです。ところがこの子は絵を描くことが嫌いで自信がないので、月曜日のなると熱が出るというわけです。自信をもたせるために絵を習わせたほうがいいでしょうか。」
対策は目先のことにとらわれないで
子どもについて心配な問題があった場合に、目先のことにとらわれて対策を立てたりしますと、それは全く解決策になりません。嫌いなお絵かきを好きにするために、絵を習わせることは、それをお子さんが望むならよいと思いますが、いやだと言うのに無理をすれば、ますます子どもを神経質な状態に追い込んでしまうでしょう。
そこで、神経質がなぜ生じたのか、神経質をなおすにはどのようにしたらよいかについて考えることから始めることにしましょう。
神経質と一口に言いますが、どのようなことで子どもを神経質だと決めてしまっているかについて、1つ1つを問題にしなければなりません。例えば、何かを気にしたり、心配することが多い―ということであれば、これは明らかにこれまでの子育ての中に問題があるのです。簡単に言えば、お母さんの心配症が子どもの心に影響しているのです。子どもはもともとのんきに育つ傾向をもっています。ですから、子どもの自発性にまかせて、おおらかな気持で育てていれば、子ども自身で心配症になることはありません。子どもが「いたずら」を始めるころ、あるいは「冒険」を始めるころに、「危い、危い」と禁止したり、ちょっとおとなしくしていると「熱があるのではないか」などと額に手を当てたり体温を測ったりしますと、子どもは自分の行動についてだんだんと自信を失ってしまい、何か行動を起こそうとするときに、危険がないかと心配するようになりますし、ちょっと熱い感じがすると熱が出たのではないかと不安感をもつようになってしまいます。
また、こわがりであったり、ちょっとしたことにもすぐに泣いてしまうという子どもであれば、子どもに無用な恐怖感を与えるような家族がいたり、泣かせまいとしてちやほやする家族がいるはずです。
お母さんの神経質がなおると、子どもの神経質もなおります
私は、神経質と言われるような子どもをたくさん扱ってきましたが、お母さんに対するカウンセリングが効果をあげると、子どもの神経質もまた消えてしまいます。なかなかおおらかになれないお母さんの場合、夏休みを利用して家庭から離して、子どもが大勢いて、その両親がおおらかな親戚に子どもを預けたところ、すっかり神経質がなおったという例もあります。
神経質な子どものお母さんが神経質であることが非常に多いのですが、そのお母さんを育てた母親、つまりおばあちゃんが神経質であったということが少なくありません。そうなると、あたかも神経質が遺伝をするように見えますが、神経質な環境が代々続いているのです。お母さんがどのように育てられたかを聞いてみますと、そのことがよくわかります。
神経質なお母さんは、子どもの人格の柱である自発性の発達を抑圧する育て方をしています。心配のあまり、あれこれと口を出して子どもに干渉したり、心配が先立って子どもを過保護に扱っています。ですから、自発性の発達途上に現れるはずの「いたずら」も「反抗」も現れていません。意欲的に活動することができない状態におかれていますから、おとなしい子どもになっています。ですから、子どもの神経質をなおすためには、お母さんの育て方を180度変える必要があります。
また、からだが弱々しい―というのはどのような状態を言うのでしょうか。弱々しいという言葉から受ける私の感じでは、お母さんがそのように思い込んでいるのではないでしょうか。やせている子どもは弱々しく見えますが、病気が少なかったり、運動機能の発達のよい子どもが少なくないので、弱い子どもとは言えません。ときどき発熱したり、下痢をくり返すという子どもも弱い子どものように思えますが、乾布まさつを朝晩続けることによって、そうした状態がすっかりなおることを、私の園医としての25年の経験の中ではっきりと言うことができます。
このような子どもをいきいきと活動することのできる子どもに変えるためには、お母さんが、神経質だとか弱々しいといった子どもの見方から脱して、前向きの姿勢の子育てに変える必要があります。そのためにはまず、乾布まさつを励行してみて下さい(「小児ぜん息で苦しんでいます。何かよい治療法はないでしょうか。」参照)。さらには、ジョギングなどをしてはどうでしょう。休日にはお父さんもいっしょに山登りなどをすることをおすすめします。
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