　発音がおそく、字もおぼえられません。幼稚園生活ができるかどうか心配です

「満４歳１ヵ月になる男の子ですが、からだの発育がおそく、２歳半ぐらいにしか見えません。そしてよだれが多く、言葉もほんのわずかしか話せません。でもこちらの言うことは大体はわかっているようです。近所のお子さんが来年幼稚園に入るので私の子どももいきたがるのですが、字が１つもおぼえられないというのにみなさんといっしょに幼稚園生活ができるでしょうか。なお、この子は未熟児で３ヵ月間病院の完全看護室で育ち、その上脱臼で２歳半まで病院で治療を受けました。」

おくれていても幼稚園生活の中でどんどん伸びます

からだの発育、つまり身長や体重が少なくても、必ずしも知的能力とは関係しません。からだの発育には個人差が著しく、４歳でも２歳半ぐらいの発育の状態にある子どもがいます。そして、それは生まれつきによるものと言ってもよく、とくに未熟児で生まれたことも関係していると思われます。生まれつきの面が大きいからだの発育について、お母さんとしては心配する必要もありませんし、ひけ目を感ずることも無用です。その子どもの発育の「個性」を大切に見守っていることです。小学校に入ってから、あるいは思春期になってから、急に大きくなる子どももいます。

幼稚園に入れることについてのご相談ですが、字が１つもおぼえられないと心配しているのですね。そのことで、お母さんが幼稚園をよく理解していないのは残念です。幼稚園の第１の目的は、子どもの社会性を伸ばすことにあります。社会性というのは、お友だちを作る能力と自分で自分の身の回りのことをする能力（生活習慣の自立）です。つまり、幼稚園に通い、お友だちと積極的に遊ぶことができるようになることと、お母さんや先生が注意しなくても、手を洗ったり、顔を洗ったり、歯を磨いたり、衣類の着脱ができるようになることです。これらは、４歳から５歳にかけてどんどんと発達しますから、これからの幼稚園生活に期待をかけてよいことです。ただし、生活習慣は、これまでの家庭生活の中での練習が基礎となっていますから、現在どのような状態にあるかについて改めて点検してみるとよいでしょう。まず、衣類の着脱を自分ですることができるでしょうか、何らかの援助が必要でしょうか。遊んだあとや食膳の手洗いなどは、命令すればするか、言われなくてもするか、どの程度きれいにすることができるでしょうか。もちろん、食事は１人でできるでしょう。食器の後片づけをするでしょうか。多少のおくれはあっても、これからの園生活の中でどんどんと伸びていくと思います。

お友だち作りの能力ですが、これまでに遊園地など子どもの集まる場所へお子さんを連れていったことがあるでしょうか。そのときにそこにいる子どもたちに対して興味をもったかどうか、つまり子どもたちのすることをじっと見ていたり、何となしにその中に入っていっていっしょに遊ぶようなことがあったでしょうか。これらのエピソードがあれば、お友だちといっしょに楽しく園生活をおくることができると思います。くり返しになりますが、幼稚園に入れたならば、お友だち作りの能力の発達を第１に願って、お友だちを呼んだり、お友だちの家へ呼ばれたりと言った生活ができるように、お母さんとしても、子どものために心の準備をしておいて下さい。

言葉の発達にも幼稚園生活は役立ちます

さて、言葉の問題ですが、ほんのわずかしか話せないというのはどの程度なのでしょうか。言葉の発達のおくれがあるとすれば、その原因を考えてみなければなりません。第１に環境に原因がある場合です。言葉の発達は、とくに大人の言葉を耳から取り入れ、それを口に出すことによって発達します。ですから、お母さんやお父さんが子どもと１対１の関係の中で、どのように言葉の刺激を与えたかが問題となります。その意味で、生後半年間に、お母さんやお父さんが赤ちゃんをどのようにあやしたかが大きな意味をもっています。未熟児のために３ヵ月も病院生活をしなければならなかったとすれば、言葉の刺激は極端に少なかったのではないかと思います。そのあと、家に帰ってきてから、からだが小さいということで、からだの発育のほうに気をとられて、言葉の刺激を与えることが少なかったのではないでしょうか。

もし環境の影響が大きいために言葉の発達がおくれているとすれば、これからの幼稚園生活は大いに役立つと思います。ただし、おくれが著しいときには、家庭に帰ってからも、子どもをひざの上に乗せて、ゆっくりと絵本を読んであげることが必要ですし、その点でお母さんが努力することが大切です。そのような母子関係が少なかったとすれば、スキンシップをすることが必要です（「４歳になるのに、言葉だけがおそく、思うようにしゃべれません。」参照）。

なお、小柄であっても、運動機能の発達をうながすことも考えましょう。また、知能テストは、このような子どもの場合には受けないことをおすすめします（「知能テストが中の下だと言われました。知能指数をどう考えたらいいのでしょうか。」）。