　からだが弱いので園を休ませたら、急に気が荒くなり、物を投げるように

「５歳の男の子です。主人がなくなってから母の家に同居させてもらって、私は働きに出ています。子どもは保育園に預けていたのですが、夏にプールに入って熱を出しましたとき、お医者様から「腎臓が１つしかないのに２つの働きをしているので園を休ませなさい」と言われ、それ以来休んでおります。ところがそれから気が荒くなり、思うようにならないと何でも物を投げるようになってしまいました。叩いて叱るのもよくないと思いますが、物を投げるのをやめさせるには、どうしたらいいでしょうか。」

なぜ荒れるのか？子どもの気持を汲んであげる

お母さんにとって扱いにくい行動が生じたときには、まず、子どもの気持を汲んであげることが大切です。子どもが自分の行動を言葉で説明することができませんから、お母さんのほうで、前後の様子やこれまでの発達の経過などについて、あれこれと考えてみることから始めなければならないでしょう。扱いにくい行動の原因については、われわれ専門家でも迷うことが多いので、お母さんにそれを要求することが無理なことと言えましょうが、どのようなときに荒っぽい行動が現れるか、どのようにすると比較的早くおさまるか―などについて、お母さんは実際に体験しているので、それを聞かせてもらうことは、われわれにとって非常によい示唆となるものです。とくに、子どもの気持を汲むことのできるお母さんからの報告は、非常によい資料でもあるのです。そのようなお母さんは、お母さんにとって扱いにくい子どもだからと言って、叱ったり叩いたりすることがありません。むしろ、自分の扱い方に何らかの誤りがあって、子どもの情緒を不安定にしていると考えて、子どもをかわいそうに思い、抱きしめるでしょう。

園を楽しみにしていたのなら、荒れるのは当然です

では、お子さんの気が荒くなり、思うようにならないと何でも物を投げる―ということの原因ですが、医者から園を休ませるようにと言われ､休むようになってから荒れるようになったというのであれば、第１に、園を休ませていることが原因ではないかと考えてみなければならないでしょう。とくに休園させる前までは園生活を楽しみにしていたというのであれば、そのことが原因だと断定できると思います。順調に自発性が発達している子どもは、４歳を過ぎると、お友だちと遊ぶことが何よりも楽しいという状態になります。とくにきょうだいがいない場合には、お友だちが唯一の遊び相手になるわけです。その楽しさをとめられたのですから、気持がむしゃくしゃするのも当然、と考えてあげなければならないでしょう。そうならば、何とかして通園することができるようにしてあげるか、お友だちに家にきてもらうように工夫すべきです。医者から言われたことをそのまま受け取ると、腎臓が１つしかないから、一生集団生活はできない―ということになります。今どきそのようなことを言う医者は非常に少ないので、何かお母さんの聞きまちがえではないかと思います。もう１度、その点について医者と話し合ってみて下さい。つまり、どのようにしたら集団生活をさせることができるかを聞いてみることです。もし、同じ答えが返ってきたならば、大きな病院の小児科医で、とくに腎臓の研究をしている人にこれからどのような点を注意していれば集団生活をさせることができるかについてくわしく説明してもらいましょう。医者は、腎臓病の子どもを守る親の会の所在地を教えてくれるでしょう。そうしたらその会に出席していろいろと情報を交換すると励みになります。

結局、通園できなくなったことが、子どもの荒れる原因とすれば、園に通うことができるようになれば、すぐに問題が解決されるわけです。

もう１つ、荒れることの原因として考えられるのは、からだの弱い状態にある子どもをかわいそうに思って、とくにおばあちゃんが子どもを甘やかすようなことをしていないか、そのためにわがままになって、わがままが通らないと荒れるのではないか―ということです。からだの弱い子どもに対して、わが国の親たちは、物質的欲望を満たしてあげることが多いのです。好きな食べ物を食べさせたり、ほしいと言う玩具を次々と買い与えたりしている例が多く見受けられます。とくに園を休むことが始まってから、家族の者がそれをかわいそうに思って、わがままを助長させているようなことはないでしょうか。その点で「思うようにならないと」と書かれていますが、どのような内容を言うのでしょうか。もし、飲食物や玩具などの物質的欲望が満たされないと―というものでしたら、まさにわがままということになりますが、元気に遊びたいのに遊ばせてもらいないと―ということになれば、どの程度まで元気のよい遊びを許してよいかについて、医者に相談して、できるだけ活動の範囲をひろげてあげると問題は解決します。