上の子が父ちゃん子、下の子が母ちゃん子。このままではいけないと思うのですが

「4歳と3歳のとしごの女の子ですが、上の子が何をするにも主人でなければならない父親っ子に育ってしまいました。上は父ちゃん子、下は母ちゃん子とそれぞれ自認しているのです。上の子は、例えばお湯をつぐにも、排便に連れていくにも、「父ちゃんじゃないといや」と申します。ときには嫌気がさして恐ろしくなってしまいます。このような父親っ子にどのような態度で接したらいいものでしょうか。」

父親っ子の将来が心配です

大人と子どもとの関係は、大人のほうで子どもの気持を汲んで具体的につき合うことによって、密接になります。子どもの気持を汲んで―ということは、目の前にいる子どもの気持がよくわかるということで、われわれは「思いやり」と呼んでいます。また、具体的に―というのは、自分に対して「思いやり」があり、よく遊んでくれる人を慕います。お父さんばかりでなく、おばあちゃんがその対象になることが少なくありません。

4歳と3歳のとしごと言われるきょうだいの場合に、お母さんの世話は大へんだったことと思います。わたしも3人のとしごをもって、子どもたちの幼児期には、戦争のような毎日であったことを思い出します。けれども、私が3人の子どもの面倒をよくみましたので、何とかうまく子育てを切り抜けられたと思います。ただし、私は、母子関係を非常に大切に考えていましたので、1人の子どもにかかりきるようなことはしませんでした。妻もそのことを知っていましたから、1人ひとりの子供に対して、できるだけ具体的に接触して、子どもたちが不平等感をもたないように細かい配慮をしていました。

あなたの場合、下の子供の世話が大へんだったので、お父さんが上の子供の世話をよくしてくれるのを幸いに、上の子をお父さんにまかせきってしまったのでないでしょうか。おそらく、日中はお母さんが面倒をみなければならない状況だったと思いますが、どうせお父さんがよくしてくれる―と思って、上の子の世話には手抜きが生じたり、ときには邪慳に扱うようなことがあったのではないでしょうか。そのようなお母さんには、子どもがなじまないのも当然です。そして、嫌いになることさえもあります。そうなれば、母子間の情緒的な結びつきは不足になりますし、子どもの心にはお母さんの温かいイメージが刻み込まれていないので、小学校高学年、とくに思春期以後になって、母親と子どもの間にいろいろなあつれきが生じる例が少なくないのです。例えば、お父さんが長期にわたって出張するとか、何らかの原因で子どもと具体的な接触ができなくなったようなときに、子どもは強い不安に襲われることがあります。最近も、中学2年生になって夜尿が始まったという例を経験しました。お父さんが外国へ出張してからのことでした。

子どもは、本来は、お母さん・お父さんと呼んでいる人のいずれからもかわいがってもらうことを望んでいます。お父さんからはかわいがってもらっているけれども、お母さんは下の子ばかりかわいがっていて、自分を愛してくれていないのだ―と子どもが思うことは、子どもにとっても不幸ですし、これから先、お母さんにとってもいろいろと困った問題が生ずると思います。

「心の基地」はやっぱりお母さんです

そこで、お父さんとよく話し合って、上の子も下も子も、お母さんとお父さんの2人からかわいがってもらっているのだという意識を育てることが必要です。それには、急いではなりません。急いで無理が生ずると、それが子どもの心にしこりとなって残ることがあるからです。チャンスを見て、お父さんが今まで世話をしていた部分を、お母さんに渡すようにします。そのときに、お母さんがそれを受け入れてあげると、子どもはその部分はお母さんにやってもらうようになるでしょう。お母さんは、下の子についても同じように、チャンスを見て、お母さんが当然のことのように扱っていた部分をお父さんにやってもらうようにします。そして、その部分を多くしていくのです。1年ぐらいはかかるつもりでいましょう。

さらに、お母さんに望みたいのは、お父さんがいないときの上の子の扱いをねんごろにすることです。それを急に多くしますと、下の子に混乱が起きますから、ゆっくりとすすめていきましょう。とくに大切なことはスキンシップです。おそらく、上の子は、お母さんのひざの上は下の子のものと思い決めていると思いますが、チャンスをねらっていますと、不自然でなく、上の子がお母さんのひざになる状況が生じます。お母さんにそれが受け入れられたとなると、上の子はからだで甘えることができるようになるでしょう。この状態が生じたことは、子どもがお母さんを心の基地としたことを意味します。


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