学校ではいい子なのに、家では反抗的。なぜこんなに態度がちがうのでしょう
| 「小学校1年生の男の子です。成績はクラスでも最上位なのですが、最近母親の私に対して反抗的になり、口答えはする、ランドセルは放り投げておくという調子で、注意してもなかなか言うことを聞きません。先生は、家庭でもそのような態度は全然想像もできないほど学校ではいい生徒だとおっしゃいます。このように学校と家庭とで全然態度がちがうというのは、どういうことなのでしょうか。今後どのように接していったらいいか、教えて下さい。」 口答えは自発性が順調に発達している証拠です 順調に自発性の発達している子どもは、小学2、3年生のころに「中間反抗期」に入ります。この「中間反抗期」とは、2歳から3歳にかけての「第1反抗期」と、思春期の「第2反抗期」の間に、主として「口答え」を中心とした「反抗期」があることを強調したかったので、私が名づけたものです。なぜ「口答え」の重要性を強調したかったかと言いますと、わが国の封建時代には、親の言うことは何でもハイと言って聞け―という「しつけ」があったからです。この「しつけ」は軍国主義の時代に入ってから、いっそう強くなりました。それは、上官の命令には文句を言わずに従えということで、家庭でも親の言うことが理不尽であっても従うことが親孝行であると教えられました。ですから、親に「口答え」をしようものなら、親不孝と言って叱られたり叩かれたりしたものです。それはまた、不忠につながっていましたから、大罪に等しいというわけです。この考え方は、われわれ日本人には非常に強く植え込まれましたので、親から子どもに伝わって、若い親たちの間でも、相変わらずこの考え方に固執している者が少なくないのです。とくに「口答え」に対する親の抵抗感が強く、「口答え」は「悪い子」のすることだと言う考え方がつきまとっています。そのために、家庭の民主化も社会の民主化もおくれていると言えましょう。 その点で、民主的な欧米では、子どもに対して、自分の意見をはっきり言うように「しつけ」をしています。その意見の中には、「いやだ」とか「ちがう」ということも含まれています。わが国で言えば「口答え」に相当することが認められているのです。これは、社会生活全般に言えることです。その点で思い出すエピソードを述べましょう。これは西ドイツでのエピソードですが、私の友人であり、研究所の所長をしている男を訪ねたときに、彼は若い女医さんと議論をしていました。その女医さんは、所長の意見に対して反対して、譲ろうとしないのです。そのために、私は10分ほど待たされたのです。「お客さんが見えているから、あとにしよう」ということになったのですが、所長の彼は、私に対して討論の内容を説明し、若い女医さんはなかなか良い意見をもっている―と言ってほめていました。わが国だったらどうでしょう。若い医者が所長に対して自分の意見を堂々と言うようなことはできないでしょうし、若い人から意見を言われたりすると、生意気などと言う所長もいるでしょう。欧米では、社会全体が、自分の意見をはっきり言う人を尊重していますし、それが小さいときからの「しつけ」に関係していると考えられます。 口答えや反抗はおおらかに許す気持で 以上のように考えますと、お子さんがお母さんに反抗的になり、「口答え」をするようになったのは、自発性が順調に発達していることを意味しますし、これまでのお母さんの育て方がよかったと言えましょう。その点から言っても、子どもに対してあれこれと注意することをやめて、お前に「まかせた」という態度で接すれば、あれこれと反抗することはなくなるでしょうし、自分の行動や生活に「責任」をもつようになり、これからの人生はすばらしいものとなりますから、お母さんはそれを見守っていればよいでしょう。 なぜ「口答え」をするのでしょうか。それは、今までは絶対だと思っていたお母さんにもいろいろと欠点があることが見えてくるからです。ですから「口答え」の内容が正しければ、お母さん自身反省する態度が必要になります。子どもは「お母さんだってやっているくせに」と言ったならば、「そうね」と言わなければならないことがたくさんあるからです。「口答え」と同時に、自己批判の能力も発達しているのです。 では、学校の先生が「よい子」と言っているのはなぜでしょうか。1つは、先生が子どもの長所をよく認め、よい評価をしているからです。自分を認めてくれる先生に対しては、子どもは自分の「よさ」を発揮しようと努力するものです。ただし、そこに危険性もあるのです。つまり、よいところを先生に見せようとして、自分の心にうそをついてしまうことになるからです。 その意味でも、家庭にいるときにお母さんに対して「反抗」しているのは、自分の心をすなおに表現していると言ってもよいのです。おおらかな気持で許してあげましょう。 |
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