けんかでいつも暴力をふるわれます。よそのお子さんにどう言ったらいい

「うちに3歳半の女の子がおり、近所の4歳の男の子といつも遊んでいるのですが、けんかばかりして困っております。けんかが始まると、うちの子は口でやっつけようとし、相手はすぐに手を出して顔をかきむしるやら押し倒すやら、ときにはブロック塀で頭を打つこともあり、危くて見ていられません。それでつい私が口を出して、「駄目よ」とたしなめるのですが、相手はよそのお子さんのことであり、この年齢の子どものけんかをどのように扱ったらよいものかと悩んでおります。」

けんかを通して、子どもは社会性を発達させます

昔から、わが国では、子どもの「けんか」に親が出るな―と言われてきました。それは、子どもはお友だちやきょうだいと「けんか」をしながら発達していくものであること、親が出ることによって子どもの心に傷がついてしまうことを指摘しているのです。

子どもの「けんか」は主として自己主張の衝突です。ですから「けんか」をする子どもは、自発性が順調に発達していることを「けんか」によって表現していると言えましょう。子どもの「けんか」が大人の「けんか」と全くちがうのは、「けんか」をしてもまた仲直りをして遊び始めるということです。つまり、自己主張の衝突をじょうずに解決する能力がまだ発達しないために、ののしりあったり暴力を使う結果になってしまうのです。その点で、大人の間の意見の衝突では、巻かれたり折れたりして、よくも悪くも、ちえを用いて解決することができるのです。

子どもは「けんか」を通して、相手にも相手なりの主張があることを知ります。これは、社会性の発達にとっては非常に大切なことです。しかし、まだ自己中心的ですから、自分の主張を通そうとします。そこで「けんか」になるのです。しかし、発達という現象はすばらしいもので、もう半年もすれば「けんか」の様相が変わってきます。自己主張をしても、それが「けんか」になることを予測しますと、何とかそれを回避しようとするちえを働かすようになります。相手の気を引くようなことを言ってみたり、別の提案をしたり、ときにはごまかすような手段を取ったりします。ですから「けんか」の回数が減ってきます。そして、楽しく遊ぶためにルールや順番を決めようとします。それがなかなかうまくいかずに「けんか」が起きたりもしますが、それでも楽しく遊ぶことが多くなってきます。もちろん「けんか」もしますが、その解決法もじょうずになってきます。ただし、それは、大人の介入なしに「けんか」の経過を見た場合です。大人が介入して「けんか」がおさまった場合には、両方の子どもの心には不満が残ります。とくに、悪者にされた子どもには、相手の子どもに対して敵意をもつことさえあります。そのような子どもが「けんか」を始めますと、不満や敵意が爆発しますので、いろいろと危険な攻撃的行動を現すことさえあります。ですから、子どもの「けんか」には大人が介入してはいけないのです。

幼稚園などで、その教育目標の中に、「いつも仲よく」などを掲げていることがありますが、これは子どもの発達を無視したものと言えましょう。子どもは「けんか」をしながらお友だちを作る能力を発達させているのですから・・・・・・。「いつも仲よく」を望みますと、先生の中には「けんかをする子は悪い子」などといって「悪い子」と評価する者が現れてきます。また、子どものけんかに介入してきて、「どっちが先に手を出したの」などと「けんか」を裁こうとしますし、けんか両成敗というわけで、2人に「ごめんなさい」を言わせて幕切れにしようとします。このような先生に出会ったら、子どもの社会性の発達は妨げられてしまいます。お母さんにしても同様で、子どもの「けんか」に介入しては、子どもの心に傷を与えているものが少なくありません。子どもの「けんか」には流れがあって、1つの場面を見ただけで、よいの悪いのと裁くことはできないのです。

けんかをしない子どもこそ心配です

一方、子ども同士少しも「けんか」をしないという関係の例があります。お母さんの中にはそのような関係を「親友」と思ってしまう人がいますが、「しんゆう」などは思春期以後になってできるもので、幼児期の仲よしは本当の仲よしではなく、どちらかの子どもの自発性の発達がおくれているために自己主張をしないので、うまく折り合っているに過ぎないのです。2人とも自発性の発達がおくれている場合には、さらに静かに遊んでいて仲よしのように見えますが、遊びの内容が貧弱で、いきいきとしていません。その点をよく見抜くお母さんになってほしいのです。そして、自発性の発達をうながすために、これまでの育て方を180度変えなければなりません。つまり、「けんか」のできる子どもにするわけです。

「けんか」は見ていて決して楽しいものではありませんが、子どもの「けんか」に親は口出しをしない―という原則を守ってほしいと願っています。危険を避ける工夫をしながら・・・・・・。


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