昼間のおもらしがひどくなりました。叱っても、やさしくしてもなおりません

「満4歳2ヵ月の男の子ですが、1年程前から昼間お小水を少しもらすようになり、それが最近ひどくなりました。ちょっとほっておきますと、パンツからズボンはもとよりシャツまでよごしています。叱ったり、やさしく下着を替えてやったり、いろいろしてみますが、同じことです。からだに欠陥があるのでしょうか。それとも精神的なものでしょうか。」

心の不満がおもらしの原因になることがあります

このような状態を、昼間遺尿と言います。夜間の遺尿、つまり夜尿に対して言われるのですが、夜尿との大きなちがいは、夜尿のときの遺尿が大量であるのに比較して、その量が少なく、いわゆるチビリであることです。しかし、チビリの数が多いと、パンツばかりでなくズボンも濡れてしまいます。そのままにしておきますと、臭気がただよう状態になってしまいます。

このような子どもについて、尿の検査をしてみても、そのほかの医学的な検査をしてみても、何の異常もない―ということが圧倒的に多いので、どうしても心理的なものということになります。しかし、何かからだに病気がひそんでいるのを見逃すことはできませんから、一応、尿の検査をしてもらうことは必要で、万一異常が見つかったならばその治療をきちっとすることが大切です。

では、心理的なものということになったならば、何を考えたらよいでしょうか。第一に、子どもの心に何らかの負担をかけていないかについて考えてみる必要があります。例えば、第一子の昼間遺尿については、次の子が生まれるとすぐに「お兄ちゃんになったのでしょう」と言って、兄らしさを求めることが原因です。心理的に言って兄らしさの気持が少し現れるのは何歳でしょうか。それは、4歳前後です。このころになりますと、ほんの少し下の子どもをかわいがる気持が起きてきます。しかし、それがほんの少しであることを忘れないで下さい。自分の持ち物(玩具など)にさわられたりすると怒ります。そして、ガンと突き倒すかも知れません。また、自分の遊びを妨害されても怒ります。そして「あっちへいけ」とこわい顔をして下の子どもを泣かしてしまうでしょう。

それを見たお母さんは「お兄ちゃんのくせに何です」と叱ってしまうことが多いのです。そうなりますと、上の子どもの心は傷をつけられてしまいます。それは、兄らしさといった気持ちが発達していないからです。強い不満が残ります。そして、下の子なんかいないほうがいい―と思ったり、それを行動に現して、下の子をいじめるようになります。ところが、お母さんに叱られるのがこわくて、じっと我慢をしている子どもがいます。しかし、心の中ではいらいらしていて、それがいろいろな形でからだに現れてきますが、昼間遺尿となって表れてくることが少なくないのです。

また、男、男、女といった組み合わせの兄弟の場合に、2番目の男の子に昼間遺尿が現れてくることがあります。それというのも、お母さん・お父さんにかわいがってもらっていないという不安があるからです。2番目の男の子は、衣服にしても玩具などにしても、上の子のお古をもらうことが多く、育児が間に合わせになることが多いからです。下の女の子は、衣類にしても玩具にしてもすべてにおいて新しいものが与えられえていることに対してひがんでいるのですが、それを行動に現して下の子をいじめますと、お母さんに叱られるので、ひがみ心が現れるのをおさえているのです。お母さんとしては、下の子を直接いじめることがないので、妹に対する「思いやり」のある子どもだと思っていることさえあります。しかし、子どもの心の苦しさが昼間遺尿という形をとって現れているわけです。

スキンシップを続けるうちに、なおってしまう例も

では、どのように昼間遺尿の子どもに対処したらよいでしょうか。私は、できるだけ多くスキンシップを実現してほしい―とお母さんにお願いしています。ひざの上に乗せたり、添い寝をしてあげるのです。それを続けているうちに、昼間遺尿がだんだんに少なくなり、とうとうなおってしまったという例があります。ただし、ほかにきょうだいがいると、それがなかなか実現できないでしょう。下にきょうだいがいるとつい遠慮がちになり、下のきょうだいが抱かれにきたときに、お母さんのひざを下の子に譲ってしまうことが少なくありません。そうしないと、お母さんに叱られることを知っているからです。

そこで私がすすめているのは、ほかのきょうだいをお父さんか実家のお年寄りに頼んで、その子どもと2人だけでゆっくりと遊んでくるのです。一泊旅行をしてもよいでしょう。それを何回がくり返しているうちに、子どもは、自分もまたお母さんにかわいがってもらっているのだ―という実感にひたることができます。お母さんが、子どもの心の基地になり、いつの間にか昼間遺尿が消えています。


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