箸が使えず、いまだにスプーンで食べます。箸のしつけで迷っています

「3歳2ヵ月の男の子ですが、食事のとき箸がじょうずに使えないため、いまだにスプーンを使っております。食事のたびに箸に慣らそうと使わせてみるのですが、うまく持てないので、自分でスプーンを持ってきてしまいます。そして箸なら食べないとダダをこねるのです。こちらも強引に箸を使わないなら食べさせないようにしたらいいものか、もっと気長に辛抱強くならせていくのがいいか迷っております。どちらがいいか、ご意見をお聞かせくださいませ。」

なぜ箸のしつけを急ぐのでしょうか

どうして箸の使用を急いでいるのでしょうか。おそらく何かの本で、箸の使用は日本人に特有な習慣であり、手先の器用さの訓練に役立つ―とあるのを読んだからではないでしょうか。お母さんの中には、このような記事を読みますと、急にあせり出して、強制的になる人がいて、子どもに対して抵抗感を強めてしまっていることが少なくありません。

どうしたら、箸の使える子どもにすることができるでしょうか。それには、まず、箸に対する興味を誘うことが必要です。つまり、どのようにしたら子どもが箸の使用に興味をもつか、あれこれと工夫することが、お母さんの英知です。それには、お母さん自身が、箸を面白く使ってみせることが必要です。例えば、お芋を箸ではさんでみて、つるっと滑らせ、「あらあら、お芋が逃げ出した」などとおどけて見せるのです。そのときに、すぐに興味をもってお母さんのまねをして、それ以後箸を使うことに興味を示す子どももいるでしょう。お母さんのふざけにすぐに乗った子どもです。しかし、どの子どももすぐに乗るとは限りません。とくに、それ以前に強制されていた子どもには、警戒心があります。しかし、お母さんのしぐさの面白さは子どもの心に残ります。そして、後日、お母さんのまねをしてみるかも知れません。

しつけにも「遊び」を取り入れて

わが国のお母さんは、しつけとか生活習慣と言うと、くそまじめにそれを子どもに強制しようとしますし、それに応じないと、子どもを叱っています。このようなやり方では、子どもは拒否的になってしまいます。生活習慣のしつけにも、「遊び」を導入することが大切です。「遊び」と言う言葉を使いますと、お母さんの中にはふまじめなことのように思う人が少なくありません。それは、子どもの「遊び」の本質を理解していないからです。子どもの「遊び」は生活であり、学習である―と言われているのを知っていますか。子育てには、何よりも「遊び」が大切です。また、お母さんの生活にも「遊び」の要素が含まれることが大切で、お母さんも大いに「遊ぶ」工夫が必要です。お母さんは何をして遊んでいますか―を聞かれたときに、私はこれこれのことをして遊んでいます―と胸を張って答えることのできるお母さんになってほしいのです。

残念ながら、お母さん自身に「遊び」がなく、いつでもあくせくと暮らしています。これは、日本人に共通で、働き蜂ともいわれていますが、エコノミック・アニマルとも言われ、ひたすらお金を得るために働いている哀れな状態が言われているのです。お金は溜まっていくかも知れませんが、大切な「心」は失われていくのです。

箸のことばかりでなく、生活習慣全般にわたって、子どもには「遊び」が必要なのです。例えば、入浴について考えてみましょう。お母さんは、入浴の意味を清潔と保温のためとしか考えていません。ところが子どもは「遊び」のために入浴するのです。水は、子どもにとって非常に魅力的な遊具です。水で「遊ぶ」のが好きですから、風呂で「遊ぶ」ために子どもは入浴するのです。そうした子どもの心を理解できるお母さんは、風呂場で遊ぶ子どもを見ていることが楽しみですし、一緒に入浴したときなどは、子どもといろいろな「遊び」をして楽しむことができます。子どもはそのようなお母さんが好きです。ですから、お母さんと一緒に入浴するのを好みます。洗顔や歯磨きの生活習慣にも「遊び」が必要ですし、手洗いの生活習慣にも同じことが言えます。

まだ、3歳2ヵ月です。しばらくの間、スプーンで食べることを楽しませてあげましょう。そのほうが食べやすいから、スプーンを使っているのです。しかし、日本人である限り、箸が使えるように指導をすることはいつも念頭におく必要があります。そして、箸の使用に対して、子どもが自分から進んで(自主的に)箸を使ってみたいな―という気持ちをもつように、工夫することが必要です。それには、決してあせらないことです。大人になるまでにはまだまだ何年もの歳月があります。大人になるまでに箸が使えるようになればよいし、少なくとも小学校に入るまでに箸の使用が可能になればよい―といったゆとりのある心で、指導して下さい。


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