近所の男の子とお医者さんごっこ。こんなとき、どう言い聞かせたらいいでしょう

「3歳10ヵ月の女の子でございます。近所に同じ年頃の女の子がおりませんので、2つ年上の男の子といつも仲よく遊んでいます。2,3日前2人でお医者様ごっこをしているのを何気なく見ておりましたら、男の子がうちの子に「おちんちんを出してみろよ」と言っています。びっくりしてそばにいき「おちんちんはおしっこの出る所でしょう。だから大事にして人に見せたりしたらいけませんよ」と叱りました。こんなときどう言い聞かせたらよろしいでしょう。お教え下さい。」

子どもにはエッチな気持はありません

お医者さんごっこは、多くの子どもが経験することで、特別のことではありません。男の子のおちんちんは外側から見ることができますから、興味の対象となることが少ないのですが、女の子のおちんちんは外側からは見ることができないので、子どもの興味の対象となりやすく、ことに女のきょうだいがいない男の子は、それを見たいという気持が強くなりがちです。

その興味は、大人のエッチな心とは全くちがい、耳の穴や鼻の穴や口の奥がどうなっているかを見たい気持と同じです。ですから、お母さんがいても、ためらいなくその男の子が「見せろ」と言ったのです。

そのようなときにびっくりするのはお母さんです。それは、大人の気持でエッチなことをしていると思うからです。そうした誤解が、性教育をやりにくくしています。「性」にめざめるのは、思春期ですから、それまでの子どもには「性」の意識は眠っていると言ってもよいでしょう。思春期になりますと、本格的に「性」と言う現象に対して積極的な興味をもち始め、性器の構造がどのようになっているか、どのようにして赤ん坊が母親のお腹の中で作られ、生まれてくるのだろうと疑問をもち、調べたり、友だちと話し合ったり、エッチな本をこっそり読んだりします。そうした思春期の子どもの状態もまた、順調に自我が発達しているからこそ、生じてくるのです。されに「性」のめざめは異性を付き合いたいという気持となって現れてきます。異性思慕と言われている状態です。もし、思春期になっても「性」の現象に対して積極的な興味を示さなかったり、異性思慕の感情が起きない子どもがいれば、自我の発達もおくれている心配な子どもと言うべきでしょう。

お母さんこそ「性」に卑猥感をもっているのでは・・・・・・

では、「性」にめざめる前の子ども、つまり思春期になる以前の子どもたちに対して、どのように「性」の教育をしたらよいでしょうか。その第1は、お母さん自身が「性」についてきちっと勉強しておく必要があるということです。この勉強は、家庭においても学校においても、誰も指導してくれなかった面で、お母さんは正当な教育を受けなかったわけです。そのために、「性」に対しては非常に誤った気持をもってしまっています。その1つが卑猥感です。つまり、エッチなことと思ってしまっています。ですから、子どもに教えるための積極的な気持にはなれないし、幼い子どもが「性」にまつわる行動をしたり言葉を使ったりしただけで、びっくりしたり、よくないことと思ってしまうのです。卑猥感のほかに、不潔感や罪悪感をもっているお母さんさえいます。

これらは、お母さんの両親などによって植え込まれた気持です。これらの誤った気持を整理するために、お母さん自身が性教育について勉強してほしいのです。性教育についての本はたくさん売り出されていますから、図書館や本屋であれこれと読んでみて、お母さんが最も気に入った本を1冊買いおくとよいと思います。本の中には、生理的な解説にかたよったものがあり、私はこれを性器教育と呼んでいますが、もっと心を重要視したものが望ましいでしょう。私は「せい」が「夢」と結びついて、初めて「性」が人間性の中に位置づけられる―と主張しています。

第2に、子どもから「赤ちゃんはどこから生まれるの?」などと聞かれたときに、どのように答えたらよいかについて勉強しておくことです。そして、子どもに対してさりげなく答えられるようにしておくことです。それと言うのも、お母さんがおどおどした態度を示しますと、子どもがだんだん「性」についてはお母さんに質問してはいけないことと思うようになります。また、もし「そんなことを聞くものでない」と叱ったりすれば、「性」に対して罪悪感をもつようになってしまいます。お母さんたちは、親たちからそのような対応を受けたために、卑猥感や罪悪感をもってしまっているのです。そして、性教育はなかなか軌道に乗りません。実は、私は、昭和25年ごろから性教育の必要性を主張してきたのですが、家庭教育の中でも学校教育の中でも、なかなか気道に乗らないのです。それは、お母さん自身、あるいは学校の先生が「性」について勉強しないから悪循環が続いてしまっているのです。現在、誤った「性」意識を育てるような雑誌が町に氾濫していることを考えますと、まず、お母さんに向かって、勉強して!―と叫ばすにはいられないのです。


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