5時から10時までテレビにかじりつき。テレビの見過ぎをやめさせたいのですが
| 「4歳4ヵ月の女の子です。テレビが好きで、テレビの前にかじりつくようにして見ています。昼間はなるべく見せないようにしていますが、午後5時ごろから10時ごろまで、漫画番組がなければドラマでもなんでも見ています。そしてこちらが返答に困るようなことを質問しますので、「もう遅いから寝なさい」と言ってテレビを消すと怒ります。テレビの見過ぎで目を悪くはしないかと心配です。もっと他に興味を向けさせたいのですが・・・・・・。なお、昼は2歳の妹と家の中で遊ぶぐらいで近所に友だちがいないのです。」 テレビの見過ぎを放任すると、人格形成にゆがみが このようなご質問を受けるたびに、テレビが子どもにとって悪い視聴覚教材になってしまっていることを嘆かずにはいられません。まさに、お子さん方はテレビ中毒という状態になっています。この中毒からお子さんを救うには、いったんテレビを家庭から追放するよりほかに方法はないでしょう。「もうおそいから寝なさい」と言ってテレビを消すと、お子さんが怒る―それに負けている親では、全く「しつけ」のできないお母さんだと言いたくなります。おそらく、もう少し大きくなり、子ども部屋を与えるようになりますと、その部屋にテレビを備えるのではないでしょうか。テレビ中毒は続いていくでしょう。 テレビの見過ぎについては、眼を悪くするなどは末梢のことで、人格形成にゆがみを与えてしまいます。第1は、自発性の乏しい子どもになることです。自発性とは、自分で考えて「遊び」を見つけ出し、いきいきと「遊ぶ」力です。この力が伸びていくためには、「遊び」に夢中になる子どもに育てなければなりません。その中に、「いたずら」が含まれています。「いたずら」は、大人で言えば研究心の現れです。その点で、十分に「遊ぶ」経験をしていない子どもは、自発性が伸びず、小学校に入ってからいろいろと困ったことが起きてくるでしょう。第1に、学習意欲が乏しいことです。そのために、学校の先生から注意を受けますし、お母さんはくり返しくり返し「勉強しなさい」と言わなくてはならないような状況に追い込まれるでしょう。そのときになって多くのお母さんは、「どうして勉強する意欲がないんだろう」と子どもを責めているのです。その原因が、テレビの見過ぎを放任していたお母さんになることを少しも反省しようとせずに、子どもを責めてばかりいるのですから、子どもはお母さんに反感をもつようになるでしょう。 将来泣かないために、テレビの管理はきちっと 自発性に乏しい子どもは、友だちができません。友達のできる子どもはよく「遊ぶ」ことのできる子どもです。友だちと「遊び」を共有できますから、友達ができるのです。友だちを作る能力の乏しい子どもは、孤独になってしまいます。学校に行っても、休み時間などにポツンとしているでしょう。そして、登校に積極的でなくなってしまいます。ついに、登校拒否になるかも知れません。それに対して、学校が楽しいという子どもは、勉強することが目的ではなく、友だちと遊ぶ楽しさがあるからです。友だちができないままに思春期になりますと、登校拒否が決定的になることさえあります。思春期は、精神的離乳と言って、親たちから精神的に離れて独立しようとする時期ですが、そのときにいろいろな悩みが生じます。その悩みを友達と話し合うことによって解決していくものですが、友だちがいないと悩みは深くなるばかりです。そしてノイローゼや心身症になったり、精神病ではないかと思われるような異常な行動を現す子どもさえもいるのです。思春期にいろいろと問題を起こす子どもたちを扱ってみて、幼児期のことをくわしく調べますと、自発性の発達がおくれていたことがはっきりしていますし、その中にテレビの見過ぎの子どもが含まれているのです。ですから、私は、テレビ見過ぎの子どもを作らないように、お母さんに警告を発しているのです。子どもが思春期になったときに、お母さんが泣かされないようにするために、そして子どもを苦しめないようにするために、幼児期からテレビの管理ときちっとしてほしいし、それができないようなお母さんであれば、いったんテレビを家庭から追放するようにおすすめしているのです。 私が西ドイツに留学していた昭和30、31年でしたが、そのころテレビが家庭に普及し始めていました。西ドイツでは、子どものことに関係している研究者や教育者たちがたびたびテレビについて討論し、親たちには管理しにくいものであること、しかも、映画館をそのまま家庭に持ち込むようなことになり、子どもによくない影響を及ぼすこと、体力も落ちてしまうことなどの理由によって、多くの人が反対しました。ですから、西ドイツでは2つの局の放映しかありませんし、夕方4時半から始まり、子ども番組は1時間ぐらいしかありません。それによって、家庭の秩序を守っているのです。わが国は、テレビの子どもへの影響について突っこんだ討論がないままに、普及してしまった国です。 |
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