大人の話に割り込んでおしゃべり。いくら言い聞かせてもなおりません

「5歳3ヵ月の男の子ですが、大人の話の中に割り込んでおしゃべりをして困っております。お客様がいらっしゃっても、自分が中心になって自分の話以外はさせようとしません。このおしゃべりとなおす方法はないものでしょうか。私が「大人の話の中にはいってはいけません」と何度言い聞かせても、聞き流してしまって、ちっとも言うことを聞きません。すなおに大人の言うことを聞くようにするにはどうしたらいいでしょうか。」

話を聞いてもらえなかった不満の現れです

親たちを困らせるような行動が子どもに現れますと、「そんなことをしてはいけません」と戒めたり、叱ったり叩いたりはするけれども、なぜそのような行動をするのかについて、親たち自身が反省しようとしないのは、子どもの人格形成を考えると、まことに困ったことと思います。親を困らせるような子どもの行動の多くは、それ以前の子育てに誤りがあることから生じているのです。

大人の話の中に割り込んでする子どもの原因は、それまでの生活の中で、子どものとの間に会話が少ないことによるのです。つまり、子どもがお母さんやお父さんに聞いてもらいたいことが合っても、ゆっくりと十分に聞いてもらえなかったという不満が、子どもの心にたまっているからです。

親と子どもの対話は、赤ちゃんが生まれたときから始まります。それが、あやすという親の行動です。親から十分にあやされた子どもは、人間関係に興味をもち始め、お母さんやお父さんに対して「ああ、ああ」とか「おお、おお」と言って話しかけるようになります。つまり、赤ちゃん言葉が多くなるのです。そして、言葉が始まる1歳前後から、言葉を使って人間関係を深めようとします。

言葉の発達には個人差がありますが、いずれにしても、お母さん・お父さんの言葉のまねをさかんにする時期があり、それに引き続いて非常におしゃべりになる時期があります。おしゃべりの時期に入りますと、何かにつけてお母さんやお父さんに話しかけて、その対応が大へんになることがあります。3、4歳のころは、まだ自己中心ですから、お母さんが忙しく仕事をしていても、自分がお母さんに聞いてもらいたいことがありますと、「お母さん、お母さん」と呼びかけます。そうした子どもの気持を汲んでじょうずに対応できるお母さんと、「うるさい子だねえ」と言って子どもを拒否するお母さんとでは、その後の親子関係は変わってきます。忙しく夕飯の仕度をしているときに、「お母さん、お母さん」と言ってきたときには、どうしたらよいでしょうか。「あとで」と言うよりほかはないでしょうが、子どもはすぐに聞いてもらいたいという気持でいることが多いのです。そうなると、、「あとで」と言っても、うるさく言い寄るでしょう。そのときに「わからず屋だ」と言って叱るお母さんと、よごれている手をかざして「この手をくっつけるぞ」とおどけてみせるお母さんとでは、子どもの気持のもち方がちがってきます。

子どもは、大人とちがって、これからゆっくりとおしゃべりをしよう―などと時間を作りません。急に思いついて、お母さんに聞いてもらいたいことができてくるのです。そのときに、もし手を休めることができれば、子どもをひざの上に抱いて、子どものしゃべりたいことをゆっくりと聞いてあげるならば、子どもは満足します。ところが、お母さんの仕事を優先させてしまい、子どものおしゃべりを聞く機会を逃し、子どもの心に不満を与えてしまっているお母さんが少なくないのです。

子どもの話をゆっくり聞いてあげる「思いやり」を

これは高校生のときに非行に走った女の子ですが、私にいろいろと話してくれたその中で、幼いころお母さんにしゃべりたくてもあまり聞いてもらえなかったことを恨んでいました。そのお母さんは小学校の先生で、非常に教育熱心だったので、学校の仕事(例えば答案調べなど)を家にもってきていたのです。そして、子どもから「お母さん、お母さん」と呼びかけられても、「これが終わってからね」と答えることが多く、本当に子どもに対してすまないことをしたと、反省していました。自分の手のあいたときには、子どもはもう眠くなっていたのです。「仕事の手を休めることは、やろうと思えばできたのです」とも言っていました。

これから、子どもから「お母さん、お母さん」と呼びかけられたときには、ゆっくりと聞いてあげるお母さんになって下さい。子どもの話すことは、お母さん・お父さんにとってつまらないことであるかも知れませんが、子どもはそれをお母さん・お父さんに聞かせたいのです。その気持を汲むこと、それが「思いやり」です。「思いやり」のあるお母さん・お父さんによって、子どもの心にもだんだん「思いやり」の心が芽ばえ、少しずつ親たちの迷惑になるようなことはしなくなるものです。


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