家ではよい子なのに園では悪い子。家のしつけが厳し過ぎるのでしょうか

「幼稚園にいっている女の子です。先日、先生との懇談会があり、先生から「お宅のお子さんはとてもわがままで落ちつきがなく、先生をなめているような態度をとるし、横道にそれそうな性質を持っているようです」と言われました。うちでは最近とてもいい子になったと思って喜んでおりましたのに、この言葉で失望しました。うちでしつけを厳しくしているので、外で発散しているのでしょうか。主人は「やはり悪いことは悪い、よいことはよいと区別しなければいけない」と申します。どのようにしつけたらよいでしょうか。」

しつけの抑圧から自分を解放している姿です

家庭における「しつけ」が厳しいと、そのまま無気力な子どもになってしまう子どももいますが、ほかの場所においてその抑圧から逃れて、落ちつきがなくなったり、攻撃的になる子どもが少なくありません。それはわがままのように見えますが、そうではなく、抑圧から自分を解放している姿です。われわれが小学生を対象として実施してきた夏期合宿(「手も洗わず、おもちゃも散らかしっ放し。きちんとした習慣をつけさせたいのです。」参照)家では「よい子」だった子どもが、大人やお友だちをほうきで叩いて歩いたり、エッチなことをいってはゲラゲラ笑ったり、ハメを外した「いたずら」をしたり、屋根に登って走り回ったりします。そのことをもしお母さんに話せば、お母さんは目を丸くして驚くでしょうが、われわれの合宿は、子どもを親や教師の抑圧から解放する目的をもっていますから、大いにやってよいという対応の仕方をします。そうした合宿から帰宅すると、第1に言葉が悪くなった、第2に動作が乱暴になったと訴えるお母さんが必ずいますが、最近は、われわれの合宿の意義を理解するお母さんがふえて、「おかげさまで言葉も動作も乱暴になりました」と感謝してくれるようになりました。

学校には、われわれの合宿のような「自由を子どもに与えよう」という目的はなく、むしろ約束ごとでがんじがらめにしているのが普通ですから、学校ではおとなしくしているという子どもが多いものですが、きっとお子さんの先生があまり怒らない人なのでしょう。でも、子どもの行動の背後にある気持を理解せずに、お母さんにいやみを言ったのだと思います。

子どもは絶対に「悪いこと」をしない存在です

そこで、家庭における「しつけ」を全廃することから始めなければなりません。お父さんが「悪いことは悪い、よいことはよいと区別しなければならない」と言われますが、この言葉は「しつけ」主義者によって言い伝えられてきたことです。ところが子どもの行動の背後になる子どもの心をよく理解しますと、よいことと悪いこととの区別は非常につけにくいものですし、私などは、子どもは絶対に「悪いこと」をしない存在である―という性善説に立っています。その点について、ご両親でいろいろ話し合ってみるとよいでしょうし、その際に、子どもの心の発達について書かれている本を参考にするとよいでしょう。

例えば、1歳以後に始まる「いたずら」は探索欲求にもとづく行動として児童心理学では非常に大切にしています。つまり、大人で言えば研究心の現れというわけです。ですから「いたずら」は「よいこと」で、叱るのは誤っているわけです。しかし、それによって迷惑を受ける人にいることはだんだん教えてあげる必要があります。それによって、自分から自分の行動が相手の迷惑にならないように考える力をつけていくわけです。

また、「反抗」が子どもの自発性の発達には極めて重要な意義をもち、それゆえに2歳から3歳にかけて「第1反抗期」という時期のあることを、児童心理学では強調しているのです。つまり、「反抗」する子どもが「よい子」です。ところが、わが国の封建時代の子どもの「しつけ」では、「反抗」は親不孝ときめつけられ、最も「悪いこと」とされていました。7、8歳のときにさかんになる「口答え」も全く抑圧してしまっていました。それは、「親の言うことは何でもハイと言って聞け!」というタテ社会の「しつけ」が行なわれていたからで、今日もなお、お父さんの中にはそのような意識をもっている人が少なくないのです。欧米の民主的な社会の「しつけ」には、「自分の意見をはっきりいいなさい」ということが子どもに向かって言われますし、その意見の中には、「ノー(イヤだ)」と言えることも含まれています。

また、「悪いこと」のように見える子供の「うそ」や「盗み」も、子どもの心を汲んで見ますと、無理解な親に対する一種の抵抗と言ってよいのです。「しつけ」が厳しく、しかることの多い親に対しては「うそ」という防衛手段を用いるようになりますが、叱ることのない親に対しては、子どもは正直に何でも打ち明けます。「盗み」の中にも、子どもの心を理解しようとしないで厳しい「しつけ」をする親に対する復習の意味のものがあるのです。どうか、子どもの心を理解する「思いやり」のある親になって下さい。


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