手も洗わず、おもちゃも散らかしっ放し。きちんと習慣をつけさせたいのです
| 「5歳の男の子ですが、今までは「お手々を洗いなさい」と言うと、ご飯の前には必ず手を洗っていたのですが、近ごろになって寒くなったせいか、外で遊んで手がよごれていてもズルをして、そのままお膳に向かったり致します。また遊んでいたおもちゃを「おもちゃ箱」にしまわないで出しっ放しのまま外に出て行ってしまったりします。そんなときはわざとそのままにしておいて、帰ってきたら自分で片づけさせるのですが、いかにもいいかげんな片づけ方で、結局私が後始末をする事になってしまいます。どのように指導をしたらきちんとした習慣が身につくでしょうか。」 それが活動的な子どもの姿です 生活習慣の自立のしつけは、簡単なようで、実は、なかなかむずかしいのです。おかあさんがしつけに厳しい人ですと、子どもは叱られたり叩かれたりするのがこわくて、生活習慣をきちっと実行していますが、それは本当の自立ではないのです。こわい人がいない場所では、生活習慣を一切放り出してしまうことを、私はたくさん経験してきました。それは、小学校を対象とした夏期合宿でも経験です。この合宿では、子どもたちに日課を示していませんし、命令的に指示することをしませんし、禁止事項もなく、子どもを叱ることをしません。そうなると、全くめちゃめちゃな行動になってしまう子どもがいます。お母さんの光っていた目から逃れて自由になったとたんに、お母さんに命令されてやっていた生活習慣を全部放り出してしまうのです。顔も洗わないし、歯も磨きません。どんなによごれても着替えをしません。しかし、よく見ていますと自分なりの活動(自己活動)がさかんで、お友だちと遊ぶことに熱中してる姿が見られるのです。つまり、自発性が現れており、子どもはそれを楽しんでいるのです。ですから、合宿での生活を満喫していると言ってもよいでしょう。私たちも、そのようないきいきとした子どもの姿を見て、楽しむことができるのです。 家庭においても、いきいきと遊ぶ子どもですと、生活習慣はおろそかにする時期があります。手を洗わなければならないことは知っていても、空腹感が強いと、手を洗ったふりをしたり、「洗った」とうそを言うことがあります。また、遊んだあとの片付けはなかなかしなくなってしまいます。この片づけというのは、大人でも面倒なときがありますし、創造的な面がないので、仕方なくしていることが多いと思います。つまり、散らかっていると生活しにくかったり、みっともないなどの理由によって片づけをしているお母さんが少なくないと思います。とくに、主婦としてだらしがないと非難されるのを恐れる心が働いているものです。子どもは、そのような大人の心は持ち合わせていません。ですから、活動的な子どもは、次の遊びを発想すると、それに飛びつき、いちいち片づけてから―というわけにはいかないのです。 もし、いつもきちっと手を洗ってからでないと食事をしないという子どもがいれば、すでに不潔恐怖が始まっているか、お母さんがこわいからか、手洗いをちゃんとすることでほめられたいと思っているか、いずれにしても子どもらしい活動の少ない子どもです。それと言うのも、われわれの夏期合宿で、きちっと顔を洗ったり、手を洗ったりしている子どもが少数はいるのですが、その子どもたちが、思い切ってお友だちと遊ぶことができず、宿舎の中で絵を描いたりしています。しかも、その絵が全く典型的で、面白味がないのです。成育史を聞いてみますと、「しつけ」に重点をおいて育ててきたというお母さんであり、「いたずら」も「反抗」もあまりしなかった子どもであることがわかります。つまり、自発性の発達はすでにおくれてしまっているのです。 生活習慣のしつけに目くじらを立てないで われわれの合宿では、子どもの後片づけは、まさにできていないと言ってもよいでしょう。われわれ大人も子どもと夢中になって遊びますから、とても片づけをしている暇がないと言えましょう。その中で、自発的に片づけをするような子どもは一人もいませんが、家に帰ってから「合宿ではきたなくていやだった」などとお母さんに訴える子どもがいて、そのような子どもは、翌年の合宿に参加するようなことはありません。子どもらしい活動を楽しむことのできた子どもは、その翌年の合宿参加を強く希望しますし、1年間待ち続けていたという子どももいます。 このように子どもらしい子どもとはどんな子どもか―ということを考えますと、生活習慣をつけることに目くじらを立てないようにしよう―という提案をしたくなるのです。遊びが一区切りついたときに、「片づけよう」と提案して、お母さんも一緒に片づけてあげることが続くでしょう。また、手洗いなどをごまかしても、責めないで、ユーモアで表現する工夫をしましょう。 実は、思春期になって、自分の部屋をもつようになりますと、その子どもなりに部屋を飾ったり、片づけたりするようになります。それまでは適当に―というのが私の考え方です。 |
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