食が細く、からだが小さいのです。食欲をつけ、体格をよくしたいのですが
| 「満5歳半の男の子ですが、食欲がとても少ないのです。その上好き嫌いがはげしく、自分の好きなものしか食べません。そのせいだと思いますが、3歳の標準ぐらいの体格しかありません。「せめて標準ぐらいのからだになってほしい」と思い、つい要求する物を与えてしまいますので好き嫌いもなおりません。このような子には薬でも与えたら体格がよくなるでしょうか。肝油がよいとよく聞きますが、どんなものでしょう。食欲をつける方法をお教え下さい。」 体格は生まれつきの要素が強いのです まず、体格の問題から考えてみましょう。体格には生まれつきの要素が強く、とくに身長はほとんど生まれつきによるものと考えてよいでしょう。一卵性のふたご―遺伝質を同じようにもっています―を別々に育ててみたところ、身長にはほとんど差がなかったという報告があります。つまり、お子さんが3歳ぐらいの身長であっても、それは生まれつきですから、お母さんがあれこれを栄養に注意しても、伸ばすことはできません。しかし、成長期を終えるまでの経過を追った私たちの研究では、小学校2年生ごろに急に身長が伸びる子どもがいますし、思春期になりますとどんどんと伸びていく子どもがいるのです。ですから5歳のときに小柄であっても、それは生まれつきであり、思春期になってどのように伸びるかを楽しみに待っていてよいのです。かりに思春期に小柄であっても、それはお母さんの責任ではありません。 また、体型も生まれつきの面が大きいのです。あまり食べなくても太っている子どもがいますし、かなりたくさん食べるのにやせている子どもがいますが、一般的に言えば、やせている子どもの食べる量が多くありません。つまり、その子どものからだが要求するだけの食事量をとっていると言えます。しかも、やせているからといって病気が多いとは限らないのです。やせていますと弱々しく見えますが、ほとんど病気をしないという子どもさえもいます。ですから、食べ物を強制して何とか太らせようとする必要は全くないわけです。 小柄でやせた子どもをもったお母さんは、貧弱に見えるものですから、何とかして太った子どもにしたいと望むものです。また、病気をしたりするとすぐに弱ってしまうのではないかと心配しているお母さんもいます。けれども、やせていても意外にしんは強いものが多いことはこれまでの私の経験から言うことができます。実は私が、子どものころに非常にやせていましたので、母が何とかして太った子にしようとして、追いかけ回して食べさせようとしたものでした。そのために、私は、食事に対してすっかり興味を失ってしまったのです。 やせた子どもをもったお母さんには、食事の強制が多くなっています。ひと匙でも多く食べさせようとしますので、食事時間もだらだらと長くなってしまいます。子どもが玩具で遊んでいるところへ食事を運んでいき、遊びの合間に食べさせているお母さんもいます。そのような子どもは、食事時間がきてもうれしそうな顔をしませんし、お義理に食べてあげる―といった態度です。 むしろ空腹感を味わわせて、食事に意欲を このような状態をなおすには、まず、初めに述べたように、小柄であるのもやせているのも、その子どもなりの発育の「個性」であって、これをお母さんの力で変えることはできないということをはっきりと認識することです。ですから、絶対に食事を強制しないことです。食卓でいっしょに食事をすること、そして子どもが食事を離れて遊び始めたならば、食べた量がどんなに少なくても、それで食事を終わりにして、片づけることにしましょう。「片づけますよ」と声をかけますと、子どもは「食べる」と言うでしょう。そこで食べるのを待っていますと、結局はだらだらとした食事になってしまいます。ですから、お母さんも終わり―ということにして、片づけてしまうことが大切です。こうした育て方をくり返していますと、2、3週間過ぎますと、子どもは食事に対して意欲的になります。それは、空腹感を味わい始めているからです。また、熱心に食べないと、あとでお腹が空くことを体験したからです。 空腹感を十分に味わってもらうためには、当分の間、間食を廃止します。そして、戸外に連れ出して運動する機会を多く与えます。運動をすれば、そのあとに空腹感も強くなるからです。お母さんも密室の中にいないで、子どもといっしょに戸外の空気を吸う楽しさを味わいましょう。 なお、偏食については、前項で扱いましたから参考にしてほしいのですが、間食をやめ、戸外運動を多くし、食事を強制しないというお母さんの態度が確立すれば、偏食はいつの間にか消えてしまいます。そして、食事量が少なくても、熱心に食べる子どもに変わり、お母さんの心配は解消します。 |
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