爪をかむくせがひどく、いくら注意してもダメです

「5歳の男の子です。3歳半ごろから手の爪をかむことをおぼえ、ぼんやりしているときとかテレビを見ているときなど、必ず指先を口の中に入れています。このごろでは手の爪を切らなくてもいつも短くなっているありさまで、爪切りがいらないぐらいです。幼稚園にこの春入ったのですが、やはり人前でもこのくせをを出しますので、いろいろ注意をするのですが、一向によくなりません。こういうのは単なるくせでしょうか。それとも小児のカンというものでしょうか。なお、この子は年に2度ぐらいひきつけを起こします。」

注意したり、叱ったりしても効果はありません

爪をかむくせとひきつけとは直接の関係はありません。ひきつけには大きく分けて2つのものがあります。1つは、熱がでたときに起きるひきつけで、熱性けいれんと呼ばれているものです。この種のけいれんは、学童期に入るとなおってしまうものが多いので、心配する必要はありません。熱がでたときに、けいれんをとめる薬を屯服で用いますと、効果のあることが少なくありません。もう1つのけいれんは、熱が出ていないのに倒れてしまい、2、3分間手足をばたばたさせるもので、脳の中に変化が生じて起きているのです。そのなかではてんかんが多く、脳波を測定しますとはっきりするものが多いのです。この場合は薬を長期間にわたって飲ませる必要があります。

さて、爪をかむくせは、小学校の年齢で現れ、指しゃぶりに引き続いて起きるものが多く、3歳というのは非常に少ないものです。また、爪かみのくせはなかなかなおりにくいので、早く対策を立てることが必要です。くせが始まりますと、お母さんは何とかして早くなおそうとして、「やめなさい」と注意をしたり、「指がくさってしまう」などと驚かしますが、そうした扱い方は効果がないばかりか、お母さんに隠れてするようになります。ですから、叱ったり驚かすことは一切やめることです。

情緒不安がくせとなって現れる

では、なぜ爪をかむくせが起きたのでしょうか。それは、すでに前3項で述べたように、これまでの育て方に誤りがあったために起きているのです。第1に、「しつけ」による干渉が多く、子どもの自発性の発達が妨げられ、自由に活動ができない状態の子どもにしてしまったこと、第2に、母子間の情緒的な結びつきに欠けていて、子どもには情緒の不安定があることによります。しかも2つの原因がいっしょになっている例が少なくありません。「しつけ」によって子どもを一定のわく組みの中にはめ込もうとするお母さんは、子どもを甘やかしてはいけないというわけで、子どもがお母さんのひざの上に乗ろうとしても、「甘えるんじゃない」と言って叱り、「添い寝」はいけないこととして一切させない―ということになりがちです。そのように育てられた場合には、自発性も発達しませんし、絶えず情緒的な不安をもっていて、いろいろな異常行動となってそれが現れてきますが、くせとなって現れてくることが少なくないのです。

しかも、自発性の発達のおくれている子どもは、意欲に乏しいので、戸外でからだを張って遊ぶことを好みません。子どもはもともとエネルギッシュな存在であり、疲れを知らないと言ってもよいほどです。昔であれば、木登りをしたり、崖から滑り降りたり、小川に入ったりして、日が暮れるまで遊んだものです。また、自発性の発達している子どもは3歳から4歳の間に必ず積極的にお友だちを求める気持が強くなり、お友だちといっしょに戸外で夢中になって遊びますし、夜は夕飯を食べながら眠くなって、バタン、キューと寝入ってしまいますから、くせに逃げ込むようなことはありません。その暇がないと言えましょう。

ところが、自発性の発達していない子どもは、家のなかにばかり痛がり、テレビを見ている時間が多く、そのほかの時間は何をしてよいのかわからず、ぼんやりしていたり、うろうろして、結局は時間をもてあましているので、いろいろなくせが始まるわけです。

お母さんとしては、第1に、子どもの自発性の発達をうながすために、子どもにあれこれと干渉することをやめ、情緒の安定に問題があればひざの上に乗せることを多くします。それによって情緒が安定し、自発性が発達してきますと、お友達を求める気持ちが強くなり、幼稚園のお友達をつれてきたり、お友だちの家にいったり、近所に子どもがいればその子と遊んだりして楽しみます。そのようなときに戸外で遊ぶように言いますと、だんだん戸外でからだを張って遊ぶ子どもに変わります。そのときには、すでに爪をかむくせなどはすっかり消えてしまっているはずです。

子どもの問題は、お母さんが一生懸命育てているつもりでも、育て方の誤りから生じていることが圧倒的に多いのです。つまり、その誤りに早く気づいて、子育てをやり直せば、いろいろなくせも、気になる行動も消えてしまいます。それには、半年以上かかることを覚悟しなければなりません。


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