5歳9ヵ月になるのに、指しゃぶりのくせがなおりません
| 「5歳9ヵ月の男の子ですが、2歳ごろから始まった指しゃぶりがいまだになおりません。右手の人差し指と中指の2本をテレビを見るとき、絵を描くとき、口の中に入れっ放しでチューチュー吸っています。自分でも悪いと思っているらしく、注意をすればすぐ口から出すのですが、2分とたたないうちにまたしゃぶっています。どうしてとたずねれば、のどが渇くからだと申します。右手をなめるせいか左ききですが、頭はよいほうです。1度精神科へいって催眠術でもしてもらったらどうかと思うのですが、いかがなものでしょうか。指しゃぶりをなおすよい知恵をお貸し下さいませ。」 干渉や命令をやめ、自分から積極的に遊べる子に まず、左ききについてひと言述べておきましょう。左ききについては生まれつきの要素が強いので(「左ききです。女の子なのではやくなおしてやりたいのですが。」参照)、右の指をなめるから左ききになったのではなく、左ききだから右の指をなめているのです。 さて、指しゃぶりですが、これは赤ちゃんのときには多くの子どもが経験することであって、特別のことではありません。(ただし、おしゃぶりを使っている赤ちゃんの多くには、指しゃぶりが生じないので、私は、おしゃぶりを使うようにすすめています。アメリカの育児法ではおしゃぶりが不潔だとしてやめるようにすすめているのですが、ヨーロッパでは平気で用いています。) 赤ちゃんのときに指しゃぶりがあっても、自発性が順調に発達すれば、だんだん消えていきます。1歳代では、眠くなったときとかお腹が空いたとき、退屈しているときなどに指しゃぶりが現れますが、その他のときには見られなくなります。それは、活動がさかんになるので、指をしゃぶっているひまがなくなるからです。さらに2歳代になりますと、寝る前の指しゃぶりだけになります。そして、やがて、しゃぶっている指を口から離してあげますと、夜中に目がさめない限りは、指しゃぶりをしない状態が続きます。そして、3歳を過ぎると消えてしまうのです。 ところが、年齢が進んでも指しゃぶりが減っていかない場合は、前項で述べたように、自発性の発達が妨げられ、自分で「遊び」を作り出したり、お友だちといっしょに楽しく遊ぶ力が乏しいのです。このような子どもは、幼稚園などにおいて、先生が「これをしなさい」などと命令をしない限り、ぼんやりしていたりうろうろしています。つまり、命令に従うように「しつけ」を受けてしまった結果ですし、大人に頼る気持が強くなっているからです。家庭においても、テレビを見ているとき以外には、何をするともなく時間を過ごしていることが多いものです。このまま小学校に入りますと、積極的にお友だちと遊ぼうとしませんし、自分から進んで勉強しようとはしないでしょう。宿題など、先生に命じられたことはしますが、それ以外に自分から課題を見つけてそれに打ち込むような勉強はしません。初めのうちは成績がよいかも知れませんが、中学生になりますと自発的な学習が必要となりますが、そのときに挫折してしまうのです。これが急性型の登校拒否で、わが国に多発しているのです。ですから、「しつけ」を全廃して子どもを誤った「よい子」のわく組みから解放して、自由に遊ぶことのできる子どもにしてあげなければなりません。つまり、干渉や命令をやめることです。どうぞ自分で考えて、自由に何でもしなさい―というお母さんの態度が必要になります。それは子どもを放任することではなく、子どものすることを見ていながらも、口を出さないことですから、お母さんにとっては大へんな修行になります。修行を続けているうちに、そのようなお母さんに変わることができますし、おおらかな心の持ち主になるものです。 スキンシップで情緒を安定させると、くせは消えます もう1つ大切なことは、子どもと情緒的な結びつきがしっかりとできているかどうかです。お母さんが子どもの気持をよく汲み、子どもはお母さんの近くにより、ひざの上に抱かれたときに、子どもの情緒が安定します。この状況が作られますと、くせはいつの間にか消えてしまいます。お子さんは、お母さんのひざの上によく乗るでしょうか。これまでも、お母さんのひざを心の基地としてきたでしょうか。お母さんが忙しかったりして、これまであまり子どもにかまってあげることができなかったということであれば、この際、集中的に子どもとの心の結びつきをつけるために、ひざの上に乗せてあげたり、「添い寝」をしてあげましょう。こうしたスキンシップは、子どもの情緒の安定に役立ちます。それは、お母さんからかわいがられているのだ―という確信につながるからです。ただし、子どもは情緒的に敏感です。お母さんが、子どものくせをなおすために仕方なくやってあげている―という気持で子どもをひざの上に乗せていますと、子どもはそれを敏感に感じ取ります。子どもはひざの上にいても楽しくないのです。ですから、お母さん自身、子どもをひざの上に乗せることを楽しく思うようになれるかどうか。その点での努力が大切になります。 |
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