下唇を吸うくせが、だんだんひどくなり、今では唇を強くかむように
| 「5歳の女の子ですが、2歳ぐらいから耳をさわって下唇を「チュッチュッ」と吸うようになり、いまだになおりません。友だちがいなくて淋しいからではないかと、なるべく近所の子どもさんと遊ぶように気を配って参りました。そして幼稚園にいくようになればなおるかもしれないと思っておりましたのに、1年通園した今もまだ続いております。赤ちゃんのときは下唇を吸う程度でしたが、今では口のまわりに形がつくぐらい強くかむようになりました。とくに床に入って眠りつくまでがひどいようで、本人は「こうしないと眠れないの」などと申しております。どうすればこの下唇をかむくせがなおるでしょうか。」 赤ちゃん時代の育て方に問題が 口や唇に関するくせは、赤ちゃんのときの育て方の誤りの結果が、今日まで続いていると言ってもよいでしょう。 赤ちゃんは、生まれるとすぐにお乳をほしがって泣きます。それは、自分の生命を維持するための本能によるもので、脳の中に食欲の中枢があって、空腹になりますと泣き出すのはそのためです。そこで、赤ちゃんが空腹で泣いたときに、赤ちゃんが満足するまでお乳が与えられたか、不満が残ってしまったかということが、くせが生ずるかどうかにかかわりがあるのです。ですから、「自律授乳」がすすめられているのです。「自律授乳」というのは、赤ちゃんがお腹が空いたときには、授乳時間にこだわらずにお乳を与えること、その量も赤ちゃんが満足するまで与えてよいことを意味します。その点で、授乳の時間や量にこだわって子育てをしますと、赤ちゃんには不満が残ります。その点で、古い時代の育児書には誤りがありました。きちっと時間を決めて授乳し、とくに人工栄養の場合には一定量を越えないように―という指導をしていたのです。お母さんが、どっちの方法で授乳をしたか、思い返してみてください。また、子どもが赤ちゃんのときに、お母さんが忙しかったために、赤ちゃんが空腹で泣いていてもそのままにしておいたり、もっと飲みたいと言っても与えなかったりしたようなことはなかったでしょうか。 さらに大切なことは、3歳までの子どもの育て方です。赤ちゃんに「微笑」が多くなるのは生後2ヵ月ごろですが、このときに赤ちゃんをあやしてあげたかどうかです。この「微笑」は、お母さんを招き寄せる生まれつきの「微笑」と言われ、その「微笑」があまりにもかわいいので、お母さんはあやさずにはいられなくなるという意味です。お母さんにあやされた子どもは、あやされることを期待するようになります。そして、お母さんにあやされると、よく笑うようになります。これが母子間の情緒的関係のスタートになるのです。赤ちゃんとしては、自分をあやしてくれるお母さんに思いを寄せるようになります。そのようなときに抱き上げると、赤ちゃんはとても喜びます。そして、抱かれ心地を味わいます。お母さんに抱かれたときと、ほかの家族が抱いたときとでは、赤ちゃんの反応がちがいます。また、赤ちゃんは、1人遊びにあきますと、きょろきょろと周囲を見回し、お母さんがいますと、「おお、おお」と声をかけて抱いてほしいと要求します。そのときに抱いてあげますと、赤ちゃんが大喜びです。つまり、スキンシップを楽しんでいるのです。 このようにしてスキンシップを楽しんだ赤ちゃんは、乳児期後半になりますと、必ず「人見知り」が生じます「人見知り」が現れるということは、母子間の情緒的な結びつきができたことを意味します。この「人見知り」は3歳ごろまではかなり強いのがふつうです。「人見知り」がないということは、お母さんのイメージが子どもの心に刻み込まれていないことを意味します。とくに1歳半から2歳半にかけてはお母さんを慕います。何か不安があるとお母さんのひざの上に乗ってきますし、夜中には「添い寝」を求めます。その要求を受け入れてあげることによって、子供の情緒は安定しますし、お母さんの温かいイメージが子どもの人格に刻み込まれます。 子育てをもう1度やり直す気持になって下さい 以上のようなお話をしたのは、2歳のころから下唇を吸うくせが始まったことの原因を考ええるための問題点を示したかったからです。ことに、1歳半から2歳半にかけては、子どもが寝入るときそばにいて、お話をしてあげたり、歌を歌ってあげることが、子どもが安らかに眠る状況を作り出すものです。その意味で、「早く寝なさい」などと無理に寝かせつけるようなことが多いと、子どもは不安をまぎらわすために、くせに固執するようになります。 このようなお話をしたのは、もう1度赤ちゃんのときからの育て方をやり直す気持になっていただきたかったからです。つまり、これまでにお母さんとしてやり残したことがあれば、子どもが大きくなっていても、赤ちゃんを扱うように扱ってあげることが、問題の解決に役立つ例を、私はこれまでたくさん経験してきました。 |
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