赤ちゃんのときに使った毛布が離せません。この春1年生になるのに、どうしたら

「5歳8ヵ月になる女の子ですが、赤ちゃんのときに使った毛布をいまだにもっています。端がぼろぼろになり、真っ黒になっているのですが、それがないと眠ることができません。ですから外泊のときもこの毛布をもっていきます。そして毛布をいじりながら指を2本しゃぶるのです。もうこの春から1年生になるというのに、どうしたらなおるものでしょうか。」

自発性の発達がおくれているようです

このようなくせの問題の原因を考えるときには、いつも2つの育て方について反省してみることが必要です。

1つは、お母さんとの間に情緒的な結びつきが十分にできているかどうかです。もう1つは、自発性が順調に育つように子育てをしてきたらどうかです。

自発性とは、自分で考えて「遊び」を作り出し、他人に頼らずに「遊ぶ」力です。自発性の順調に発達している子どもは、5歳にもなれば、友だちと夢中になって遊びます。ですから、幼稚園生活を楽しみますし、近所のお友だちとも行ったり来たりしてよく遊びます。くせをもっている子どもの多くが、お友達と夢中になって遊ぼうとしません。ですから通園に対しても積極的ではありません。そして、テレビを見ていることが多いものです。テレビを見る時間の多い子どもは、それだけ自己活動が少ないわけで、自発性の発達がおくれていることを現しているのです。このような子どもの成育史を調べてみますと、「いたずら」も「反抗」もなく扱いやすかったというお母さんが圧倒的に多いのです。お母さんにとって扱いやすい子どもの多くは、自発性の発達がおくれていると見てよいでしょう。自発性の発達している子どもの場合には、「いたずら」によってお母さんを困らせることが多く、近所からも文句がきたりします。活動がさかんなので、家中を散らかしたりしますし、物を壊すことも多くなり、お母さんとしては世話が焼けるものです。とくに2歳から3歳にかけて「第1反抗期」に入りますので、お母さんが「早く食べなさい」などと命令調で言えば、「イヤだもん」と言ってわざとおそく食べたり、お母さんが衣類を着せようとしますと、「自分でする!」と言ってその手を払いのけるでしょう。お母さんの目から見ますと、2歳代の子どもには無理だと思われるようなことでも「自分でする!」と言い張りますから、扱いにくいことが多く、思わず腹を立ててしまうようになり、お母さんには扱いにくい子どもです。また、しばしばかんしゃくを起こします。自分でやってみようとして始めたことがなかなかできないで、じれてかんしゃくを起こしますし、自分の力でやろうとしていたことをお母さんがやってしまったときなどは非常にかんしゃくを起こし、からだをよじって泣いたりもします。そして、3歳から4歳にかけて積極的にお友だちを求めて、いっしょに遊ぶことを楽しみます。ところが、くせの多い子どもには、以上のような発達が見られません。それには、2つの育て方の誤りがあるのです。

子どもの心を「しつけ」から解放してあげる

その1つは、誤った「よい子」のわく組の中に、「しつけ」と称して子どもをはめ込んでしまったことによります。子どもは1歳代から「しつけ」を受けて、「いたずら」が禁止されてしまっています。つまり、自発的な活動が妨げられますから、くせにふけるようになってしまうわけです。このような育て方をしてきたときには、まず、子どもを「しつけ」から解放してあげることから始めなくてはなりません。とくに、はめ込まれたわく組みを取り除いてあげることが必要で、子どもといっしょになって「いたずら」をしたり、子どもに「反抗」されたときに、それをそのまま受け入れてあげることが必要になります。また、おどけたりふざけたりする行為を楽しむことが、子どもの心の解放には役立ちます。その点で、まじめであるということには大きな問題があります。お母さんがまじめであればあるほど、子どもは「しつけ」のわく組みの中にがんじがらめになっているものです。欧米では、「まじめ」な人間はつまらない人間であり、冗談やユーモアが非常に大切にされているのです。

自発性の発達のおくれのもう1つの問題は、過保護にあります。子どもの「まかせる」ことが必要な日常的な事柄に対して、手を貸してしまっています。衣類の脱ぎ着を手伝ってしまったり、「やって」と言ってきたときに、すぐに手伝ってしまったり、「水、ちょうだい」と言ったときに、子どもにサービスをしてしまっています。そのような子どもはからだを動かして自分なりの「遊び」を楽しもうとしません。いつも受け身の生活をしていますから、どうしてもくせが多くなります。

くせの生ずるもう1つの育て方の誤りについては、次項でお話しましょう。


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