夜中に突然起き出し、寝ぼけて歩き回ります。どうしたことか心配です
| 「1年保育で幼稚園に通っている6歳の男の子です。最近よく夜中に突然起き出し「しゃぼん玉が飛んでいる。押入れから汽車が出てきてしゃぼん玉の中を通っていく」などと言って、しゃぼん玉を手で取るまねをして遊びますし、家の中を歩き回ることもあります。翌朝は全くおぼえていません。入園してからのことなので、園で神経を疲れさせるためかと心配しています。あるいは小さいときよく転んで頭を打ったせいでしょうか。」 夢中徘徊と呼ばれる状態です 小さいときに転んで頭を打ったこととは関係がありません。どうしても頭を打ったことが気になるならば、子ども専門に脳神経学の研究をしている専門家(大学病院など)に脳波の検査と脳の断層撮影(CT)をしてもらいましょう。おそらく、いずれにも異常なし―という結果が出ると思います。たとえ脳波などに異常があると言われても、夜中に突然起き出すこととは関係がないと考えてよいでしょう。 では、なぜ夜中に突然起きるのでしょうか。その状態は、3つに分けて考えることができます。第1は、夢を見ていてそれに刺激されて起き出す状態です。その場合には、夢からさめればふつうの状態になりますし、夢の話をしてくれるでしょう。楽しい夢もありますし、こわい夢もあるでしょう。夢は大人でも見るもの。全く心配がないと言えます。 第2は、夜驚と言われている状態です。この状態は、突然起きて激しく泣いたりするので、お母さん・お父さんをびっくりさせることがあります。そのときに抱いてあげますと、心臓が激しく動悸を打っているのがわかるほどです。これも、何かこわい夢を見たことによるものです。夢からなかなかさめずに泣き続けることがありますが、やがては目をさまし、自分がお母さんに抱かれていることを認識すると落ちついてきます。そして、夢の話をすることもありますが、安心感を味わうために何の夢を見ていたかについては言わないこともあります。夢の多くは、日中の新しい環境の中で何か強い刺激を与えられたことによるもので、友達にいじめられたとか、先生に叱られたなど、家庭では経験しなかった刺激を受けたためです。このような夜驚も、新しい生活に慣れてきますと、やがては消えていきます。ただし、これまでの育て方の中に過保護な面がなかったかどうかについては考え直してみる必要があります。 第3は、夢中徘徊と呼んでいる状態です。徘徊とは、歩き回る状態で、ものにおびえたように歩き回ることもありますが、何かを探すようにあちこちと家の中を歩き回ったり、ときには戸口の鍵を外して家から出て行ってしまうという子どももいます。昔から、狐つきなどと言われている状態ですが、戸外に出ると危険がありますので、厳重に鍵をかけておく必要があります。この夢中徘徊の場合には、翌朝はっきりと目がさめてから、夕べ何があったかについて聞いてみても、全くおぼえていないのが特徴です。 夢中徘徊の場合には、過去の成育史を調べてみますと、子どもに情緒的な不安を起こさせている原因があることがはっきりとしてくるでしょう。子どもが赤ちゃんのときに、お母さんが忙しかったりして、あやしたり抱き上げることが少なく、それが今日まで続いてしまったということがあります。そのような過去があれば、その年齢を問わず、つまり6歳であっても8歳であっても、日中にひざの上に抱くなどスキンシップを十分に実現してあげるとよいでしょうし、添い寝も有効です。それによって母子間の情緒的な結びつきができてきますと、夢中徘徊はいつの間にか起きなくなるものです。 母と子のスキンシップの不足がいろいろな異常行動を また、お母さんが働きに出た後の育児をお年寄りにまかせていた例で、そのお年寄りが急になくなられたあと、子どもに夢中徘徊が起きたという例があります。それは、お母さんとの間に情緒的な結びつきができていなかったことを表現しているのです。お年寄りに日中の育児をまかせていても、お母さんが家にいる限りは、子どもとの情緒的な結びつきをつける努力が必要で、それを怠りますと、お年寄りがいなくなったあとの不安は非常に強くなる危険性があり、夢中徘徊以外にもいろいろな異常行動を起こすことが少なくありません。この場合には、スキンシップを十分にしてあげたり、子どもと2人だけで外出して楽しく1日を過ごしたという経験を積み重ねる必要があります。 スキンシップについては、それを好まないお母さんがありますが、自分が育てられるときにその楽しさを味わえなかったという過去をもっています。そのようなお母さんは、しつけを優先させ、子どもを叱ることが多いので、子どもとの情緒的な結びつきができず、子どもを深刻な情緒的不安におとし入れています。こうした状態から救うために、どうかスキンシップを楽しめるお母さんになるように、努力してください。 |
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