寝るときにぐずって、寝つくのに1時間もかかります

「5歳の長女ですが、寝つきが悪く困っております。赤ちゃんのころから寝起きはよいのに寝るときにぐずるのです。今でも部屋を暗くし静かにしていなければ寝つかず、あまり神経質になってもと、ラジオを小さくつけたり、小さな明かりをつけたりしてみましたが、それを半年続けても慣れないで、結局布団に入って1時間ほどしてやっと眠りにつきます。このように寝つきに悪いのはどこかからだでも悪いのでしょうか。幼稚園でも家でも、昼は活発すぎるほど元気なのですが・・・・・・。」

何が子どもの情緒を不安定にしているのか

日中は活発に元気で遊んでいるのに、寝つきだけが悪いというお子さん。実は、この寝つきについては、お母さん自身にも経験があると思いますが、不安とか悩みとかがあると、なかなか寝つかれないものです。つまり、何とかして眠りたい、眠気は起きている、しかし気にかかることが頭に浮かんでくるとさえてしまう―ということになります。子どもの場合には、不安や悩みの原因が自分でははっきりしていませんので、眠たくなっているけれども、情緒的な不安定な状態が眠りを妨げてしまっているのです。ですから、何が子どもの情緒を不安定にしているのか、あれこれと考えてみなければなりません。

第1に考えられることは、弟や妹がいる場合です。わが国では、次の子どもが生まれますと、親たちは「お姉ちゃんになったのでしょ」「お兄ちゃんになったのでしょ」と、心理的な発達を無視して、姉らしさ、兄らしさを要求します。とくに女の子に対する要求が強いものです。心理的な発達からすれば、女の子であっても男の子であっても、姉(兄)らしい意識は4歳前後になってほんの少し芽ばえ、7歳前後になってようやくかなりはっきりと現れるという状態です。また、欧米では、きょうだいはそれぞれファーストネーム(私であればNobuyoshi、これでは長すぎるのでNobbyノビー)で呼び合い、下の子も上の子を呼ぶのにファーストネームです。ところが、わが国では、お姉ちゃん・お兄ちゃんと親たちも呼びますし、弟妹の多くがこれを使っていますから、姉・兄という言葉の持つ重みが、欧米よりはるかに大きいと思います。

つまり、姉(兄)としても意識が生じないうちに、姉(兄)らしい行動を求められますので、上の子はその重荷に耐えられずに、いらいらして物を投げたり、排尿便をたれ流しにしたり、哺乳瓶で飲みたいと言ったり、不安な感情を親たちにぶつける子どもも少なくありませんが、じっと耐えていて不安定な気持を外に現さない子どももいます。しかし、このお子さんのように寝入るときだけにそれをお母さんにぶつけるという例もあるのです。

母子の情緒的関係が十分でない場合も

このような例ではあるいは赤ちゃんのときからの母子間の情緒的関係が十分でなかったことが考えられるのです。と言うのは、情緒的関係が成立していれば、情緒的な不安定をいろいろな形でお母さんにぶつけるものです。ところが、それをはっきりと現さない子どもの場合には、過去において自分の気持を受け入れられることが少なかったために、それをぶつけることができなくなっている子どももいるのです。このような子どもは、昔の乳児院にはたくさんいました。おとなしいし、泣かないし、うるさいことを言わない―といったように一見「よい子」のように見えますが、情緒の表出をあきらめてしまっているのです。これを、施設病(ホスピタリズム)と呼んでいます。このお子さんは、よく泣いたり笑ったりするでしょうか。表情が豊かでしょうか。その点についてもう1度考えてみる必要がありますし、赤ちゃんのときからスキンシップをどのように実現してきたかを思い返してみてほしいのです。スキンシップの最も必要な年齢は3歳までで、とくに1歳半から2歳半にかけてよくお母さんのひざの上に乗ったり、夜中に「添い寝」を求めてきたりしたか、お母さんの姿が見えないと「後追い」をしたかどうかが問題になります。もし、それらがなかったということであれば、母子間の情緒的な関係が十分でなく、子どもには情緒的な不安が残されたまま今日に至っていると見てよいでしょう。

それをはっきりさせる為に、今から、子どもをひざの上に乗せたり、「添い寝」をしてみてください。その際に、お母さんが「どうぞ思う存分にからだで甘えていいのよ」という気持になってあげることが必要です。その結果、子どもがベタベタと甘えるようになったならば、過去のスキンシップが少なかったことがはっきりします。それは、過去にスキンシップを十分に味わい、情緒の安定している子どもの場合には、ベタベタと甘えることはしないからです。そこで、情緒の安定をはかるために、思い切ってベタベタと甘えることを許容してあげましょう。情緒が安定すれば、ベタベタと甘えることはしなくなり、寝入る前にぐずることはなくなってしまいます。


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