よくお腹や歯を痛がりますが、原因不明。精神的なものでしょうか

「4歳半の女の子のことでおたずね致します。よくお腹が痛いとか歯が痛いとか言っては、私に痛いところをさすらせます。歯が痛いときはすぐ歯医者に連れていきますが、お医者様は痛いはずがないのにと首をかしげています。いっしょに歩いている時でも、指を口に入れて痛いのをがまんしていますし、とても芝居だとは思われません。精神作用でそのような症状がくるのでしょうか。」

心に不安や緊張があると腹痛などが起きることがある

からだのどこかが痛いときに、いろいろと診察したり検査をしたりしても異常がないということであれば、心理的な原因を考えてみなければなりません。

第1に心に不安や緊張がありますと、それが自律神経の調子を乱し、とくに腹痛となって現れてきます。そのようなときに吐く子どももいます。このような状態を心身症と呼んでいますが、気から起きる病―と言われているものです。

お腹や歯のみでなく、目が痛いと訴えたり、関節が痛いと訴える子どももいますし、痛みはからだのいろいろな部分に現れてきます。

原因はスキンシップの不足?それとも過保護?

このような子どもの成育史をお母さんからくわしく聞いてみますと、2つの特徴があります。1つは、スキンシップが不足していることです。スキンシップの重要性は、乳児期前半から始まります。赤ちゃんが抱いてほしいと訴えたときに抱いてあげたかどうか。もし、抱きぐせをつけてはいけないと思って、泣かせっ放しにするようなことが多いと、だんだんにスキンシップを要求しなくなります。そして、一見独立心のある子どもに見えますが、それはニセの独立心であって、情緒の不安が根底にあり、いろいろなクセを現すようになります。そして、6〜8ヵ月から現れるはずの「人見知り」が現れません。ひとなつっこく、「抱っこ」と言って、手を出した大人に飛びついてしまいます。社交的な子どものように見えますが、実は、お母さんとの間の情緒的関係ができていないのです。母子間の情緒的関係がしっかりとでき、お母さんを信頼する気持をもっている赤ちゃんには、必ず「人見知り」が現れ、3歳ごろまでその状態がかなり強いものです。

ある時点までは抱っこやおんぶなどをしてスキンシップを実現していたのに、下に子どもが生まれたとたん、「お姉ちゃんになったんでしょ」などと言って、子どもからのからだでの甘えを拒否することが多くなりますと、強い情緒の不安定な状態が生じ、非常に攻撃的となったり、赤ちゃん返りの状態になったりしますし、それらを叱られたりしますと、身体症状を現す子どものが少なくありません。

このように、スキンシップを中心とした母子関係の希薄があったことがはっきりしたならば、私たちは、集中的にスキンシップを実現するように、お母さんにすすめています。自分ではスキンシップが不足していなかったというお母さんにも、ためしにやってもらいます。日中は抱っこやおんぶを、夜中には添い寝をしてもらいます。そうすると、一時的に、いわゆるべたつきと言われている状態になります。おかあさんのひざからいつまでも降りようとしませんし、寝床の中でからみついてくるようになります。こうした状態は、明らかに、スキンシップの不足を物語っているのです。べたつきがひどければひどいほど、不足の程度も強かったことになります。そこで、それを受け入れてあげる必要があるのです。それを続けているうちに、情緒が安定してきて、べたつきが少なくなってきます。それとともに、痛み(とくに腹痛)を訴えなくなっています。そして、お友だちと楽しく遊ぶ子どもに変わっています。

もう1つの人格上の問題は、過保護によって依存性が強くなっているときです。親たちに対する依存性の強い子どもは、親の姿が見えなかったりしますと不安が著しくなり、その不安を腹痛やその他の痛みという形で表現していることがあります。この場合には、子どもに手を貸すこと、つまり過保護をだんだんに減らしていく努力を続ける必要があります。子どもの心に、親から離れても自分でやっていけるという自信がついてきますと、戸外でお友だちと元気に遊ぶことが多くなり、いつの間にか痛みを訴えることが少なくなり、消えてしまいます。

ですから、お母さんとしては1つにはスキンシップを多くすること、もう1つは過保護を少なくすることが、問題の解決をはかる大切な方法です。


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