腕のヤケドのあとをとても気にします。親はどうしたらいいのでしょうか

「4月に小学校に入学する男の子ですが、生後1年2ヵ月のころ、右の腕のひじのまわりを熱湯でヤケドをし、そのあとが今も残っているのです。そして、薄着になってひじを出す季節がくるのをとても気にしているのです。外では気が弱いので、忍耐力のある子にと懸命になっているのですが、これから先、親としてこういう子どもをどんな態度で見守っていけばいいのでしょうか。また皮膚の移植ということも聞きますが、何歳ぐらいで行なうのが適当でしょうか。」

お母さんが気にすると子どもも気にするように

ひじのまわりのヤケドは、腕を曲げるときの障害を残すことがありますが、そうした障害がないようなので、不幸中の幸いでした。

まず、皮膚の移植ですが、これは、やけどの範囲や状態をよく見ないとはっきりしませんし、どの部位から移植するか、その効果はどうかなど、かなり専門的になりますので、大きな病院の皮膚科医のところに行って相談してください。移植によってヤケドのあとがきれいになおるというのであれば問題は解決するでしょう。しかし、手術がむずかしいということになったり、手術をしてもどうしてもあとが残るということになったらどうしたらよいでしょう。

私は、このように傷あとが見えるというお子さんや、脱毛症のお子さんを扱ってきて、しみじみ思うのは、お母さん・お父さんの影響が強いということです。親がそのことを気にしていると、子どもも早くから気にするようになります。まだ6歳なのに、早くも気にしているのは、おかあさんの影響が強いためと思われます。おそらくお母さんには、自分の不注意のためにヤケドをさせてしまった、申し訳ない―という気持が強いのではないでしょうか。そして、かわいそう、かわいそう―という気持にとらわれているのではないでしょうか。

情に流されず、積極的に外へ出してあげる

たしかに子どもにヤケドをさせてしまった責任はお母さんにあるでしょうが、それをいつまでも思っているのは、よいことではありません。と言うのは、子どもがそれを気にして消極的になってしまうからです。ヤケドなどのあとを自分から気にするようになるのは思春期で、自分のからだの美しさを求めるころです。そのときにからだにいろいろな問題があって気にしても、それを乗り越える子どもは、お母さんが前向きの気持で生活している場合です。そして、子どもに「自由」を与えて、自発性の発達を援助し、意欲のさかんな子どもに育てている場合です。そのような子どもは、小学校の時代に友だちからからかわれても、堂々と立ち向かったり、取り合わない態度を示しています。そのような子どもの両親は、かなり大きな傷あとやあざがあっても、どんどんと外へ連れ出して、いろいろと体験する機会を与えています。子どもは、いろいろな体験をすればするほど、適応の能力が増します。その体験の中には、友だちからからかわれることも含まれており、それに耐えたときに、意志が強くなるのです。ですから、忍耐力のある子どもにするには、ヤケドのあとなどを気にしないで、どんどんと戸外に連れ出したり、友だちと遊ぶ機会を与えることです。

とくに友だちにからかわれたときに、どうしたらよいでしょうか。お母さんが近くにいても、決して子どもの味方にならないことです。子どもの味方になって相手の子どもを責めたりすれば、それが過保護になりますから、子どもの自発性の発達を妨げてしまいます。ですから、お母さんはじっとこらえて、どのように子どもが対処するかを見ていることです。子どもが自分の力で立ち向かっていけば、それに「まかせて」おいてよいでしょう。自発性にもとづく意欲のある子どもであることが証明されたことになります。

もし、泣いてお母さんのところへやってきたときにはどのようにしてあげたらよいでしょうか。そのときには、じっと抱いてあげましょう。つらい思いをしているのですから、その気持を汲んであげることです。しかし、お母さんが情に流されて涙を流すようなことがあれば、子どもを弱虫にしてしまいます。ですから、お母さんは情に流されないようにがんばらなくてはなりません。そして、「この次は、自分でがんばってみようね」と励ましの言葉を与えましょう。すぐに強い子に変わらないでしょうが、お母さんのそのような態度にたびたび接しているうちに、だんだんに強い子どもに変わります。

意欲のさかんな子どもに育てるためには、できるだけ子どもに「まかせる」ことが必要です。「まかせる」というのは、口を出さず、手を貸さないで、じっと見ている子育ての方法で、最もむずかしい教育方法です。しかし、これを実行できるかできないかによって、子どもの人格形成は左右されるのです。


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