ひきつけを起こし、てんかんと診断されました。てんかんは薬でなおるものでしょうか
| 「5歳4ヵ月の男の子です。生まれたときは大へん大きく、難産で頭の上のほうに大きなコブがあり、3ヵ月以上も消えなかったほどです。そのためか、1歳の終わりごろから1年の間に4度ほどひきつけ、脳波をとった結果、てんかんと言われました。薬をいただいている間はひきつけなかったのですが、今年になって薬をやめましたら、3月にまたひきつけました。てんかんの薬はずうっと飲ませなくてはならないのでしょうか。また飲ませていれば完全になおるのでしょうか。」 難産で脳に影響が出ることがあります てんかんは、症状によるいくつかの分類がされていますが、ひきつけを起こす状態は「大発作」と言われるものです。その際に、熱が出ないことから、一応は熱性けいれんと区別されています。つまり、発熱していないのに急にひきつけを起こして倒れ、手足をばたばたさせたり、かたくしてしまう状態があれば、てんかんの「大発作」と考えてよいでしょう。発作の時間は、多くは2、3分で、そのあとは眠ってしまいます。そして、目をさましたあと、発作を起こしたことは全く記憶していません。つまり、発作のときには意識を失っているのです。 なぜ、このような発作を起こすのでしょうか。その原因にはまだ明らかにされていない面もありますが、脳の血管がけいれんを起こし、脳を養っている血液が脳にいかなくなることによって、脳の働きがにぶくなり、そのために気を失ってしまうわけです。なぜ血管にけいれんが起きるのか、それがお産のときの赤ちゃんの脳の外傷と関係していることが少なくありません。ただし、お産のときにできたこぶは、おそらく頭血腫と言われているもので、頭の骨のところの血液のかたまりですから、脳とは直接関係しませんが、難産のために脳の中に出血したりして、それがてんかんの原因になることは考えられます。 けいれんのある子どもに対しては、脳波を測定します。そして、波形を見ててんかんかどうかを診断します。脳波というのは、脳の細胞に生じているごく微量な電流を器械を使って外部に引き出し、紙に書かせたものです。てんかんには特有な形がありますので、その形が現れていれば、医者はてんかんと診断するでしょう。 そのほかに、脳の中に血のかたまりや腫瘍ができているときにも、けいれんを起こしますから、脳波といっしょにCTスキャンを測定することが試みられています。CTというのは脳の断層を撮影するもので、写真にかなりはっきりと異常が現れますから、その異常からいろいろな診断をします。お産が重かったという場合には、赤ちゃんの脳の中に何らかの変化が起きることのありますから、CTの撮影をしてもらうのも1つの方法だと思います。 薬は適量を毎日忘れずに飲ませる さて、てんかんにはよい薬が発明されており、薬のなかった時代とくらべますと、非常によくなおるようになりました。薬は、抗てんかん剤と総称されていますが、第1にけいれん発作をとめる目的をもっています。けいれん発作をとめるには、その子どもにあった薬を適量与える必要があります。適量と言うのは、多過ぎますと眠くなったりぼんやりしますので、子どもらしい活動ができなくなりますし、学習面にも影響しますので、その子どもになった量をきちっと決めることが医者としての大切な仕事になります。また、その子どもにあった薬の種類を決めてけいれんをとめることも、医者の大切な仕事になります。 薬をもらったとき、「忘れずに毎日きちっと飲ませてください」と言われなかったでしょうか。それは、薬をやめるとけいれん発作が起きることが少なくないからです。子どもが飲むのをいやがっても、いろいろと工夫して必ず飲ませてください。さもないと、なおりがおそくなることがあります。 薬を飲ませながら、1年にT、2回脳波の測定を行なって、てんかんに特有な波形が消えていくかどうかを見ます。年齢が高くなるにつれて、消えていく例が少なくないからです。そして、脳波が正常になると、だんだんに薬の量を少なくしていき、それでもけいれん発作が現れなければ、薬をやめます。そして、てんかんがなおったということになるわけです。 てんかんのけいれん発作がありますと、お母さんの子育てはどうしても過保護になったり干渉が多くなって、子どもの自発性の発達を妨げてしまい、意欲に乏しい子どもを作り出してしまいます。また、子どもをふびんに思って、子供が欲しいと言うものを買い与えていますと、物欲の強いわがままな子どもになってしまいます。それらの誤りを犯さないように、お母さんの努力が必要です。 なお、てんかんの子どもをもつ親たちのために、日本てんかん協会(別名・波の会)があります(〒162東京都新宿区早稲田2-2-8 全国心身障害児福祉財団内)。 |
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