左ききです。女の子なので早くなおしてやりたいのですが

「幼稚園に通っている末っ子の娘ですが、左ききなのです。主人が目に入れても痛くないほどのかわいがりようで甘やかしますので、物を書くのも左手、食事も左手です。女の子ですので早くなおしてやりたいのですが、どうしたらいいでしょうか。」

左ききは生まれつきの面が大きいようです

左ききがどうして起きるのか―この問題について、これまでにたくさんの研究が行なわれてきました。大きく分けると、遺伝説または先天説と、環境説です。環境説というのは、赤ちゃんのときに左手を多く使うように育ててしまった―というのですが、現在は遺伝説または先天説のほうが有力です。遺伝説というのは、その家系に左ききの人が多いことから言われているのですが、あなたの家庭はどうでしょうか。その点を考える際に、子どものころにどうだったか―という点を調べてみなければなりません。それは、幼いころに左ききであっても、矯正によって右ききになっている人もいるからです。また、先天説というのは、遺伝がなくても、運動機能を育てる脳の仕組みが、右ききの人と反対になっているのではないかという考え方です。私たちが右手でものを書いているのは、左の脳の仕組みによっていますが、左ききの場合には、右の脳の働きがよいからで、右の脳の働きをよくする仕組みが生まれつきよくできているのではないかというわけです。しかし、いろいろな角度から研究してみても、はっきりと原因がわかりません。

また、左ききにせよ右ききにせよ、その程度が強い人と弱い人とがあることがわかってきました。それを指数で表すことを考えた研究者がいます。全くの右ききの人が指数100、全くの左きき人の指数は0というわけです。この研究によって私たちが調べてみますと、指数70以上の人が8割以上いて、その人たちは自分を右ききと思っています。ところが、指数50前後の人は、左手を使う部分もあるし、右手を使う部分もあるというわけです。このような人の中で、練習をして両手ぎきになっている人がいます。例えば、自分の名前を書くときに、右手で書いても左手で書いても同じようにじょうずに書けるのです。どちらの手をけがしても、別の手が同じように使えるのですから、便利ですね。

男の子と女の子とをくらべてどちらが左ききが多いかといいますと、幼いころは大体同じ率で、4〜7%になりますが、わが国では女の子が「ぎっちょ」だともっともないということで矯正を強くしますので、思春期以後になりますと、男の子の半分ぐらいになっています。

また、手だけでなく、足にもきき側があります。ボールを蹴るときにどちらの足で蹴るかを見ればわかります。手が左ききなのに、あしは右ききという妙な現象もあります。足の運動も脳の仕組みによっていますから手が左ききならば足も左ききでなければならないわけですが、そうでない例もあるのです。

では、左ききの子どもをどのように指導したらよいでしょうか。世界的に言えば、左ききは生まれつきだから、使いやすい左手をそのまま使わせるようにしようという考え方が通用していますし、わが国でも同じ考え方で教育しています。つまり、そのままにしておくわけです。「ぎっちょ」という言葉も、左利きの人を軽蔑して言う言葉なので、使わないようにしようということになっていますし、みっともないという考え方もなおしていこうということになっています。

左ききは矯正する必要はありません

左ききのままにしておくと、世の中に出たときに不便なことはないか―と心配するお母さんもいると思いますが、野球の選手のグローブを思い出して下さればよいでしょう。選手には左ききの人が多いのですが、その人たちは左きき用のグローブを作ってもらっています。ですから、左ききのものにとって不便な道具があるとすれば、左きき用のものを作ってもらえばよいのです。文明は大へんな進歩をしていますから、それくらいのことは簡単です。

小学校へ入ったときに、鏡文字を書くようなことはないだろうかと心配するお母さんもいるでしょうが、左ききでなくてもかがみ文字を書く子どもがいますし、教育によってきちっと書くことができるようになりますから、心配する必要はありません。

いずれにしても、子どもが使いやすい手を使うことができるように、とくに矯正することがいりません。もしできるならば、両手ぎきにしてあげるように指導したいと思いますが、これも夢中になることではありません。

 

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