ぬり絵が好きなのですが、髪の毛を赤や青でぬり、実物とちがう色を使うのです

「5歳になった女の子ですが、最近ぬり絵に大へん興味をもち始めました。ところがそのぬり方を見ていますと、いろいろな色を使い分けて色彩的には一見きれいなのですが、髪の毛の色が赤かったり青かったりで、私の見る実物の色と全然ちがう色を平気で使っているのです。こんなとき「髪の毛の色は何色?」と注意してもいいのでしょうか。固定観念を植えつけるのも考えものだと思いますし、どのように指導したらよいか迷っています。」

固定観念にとらわれないで・・・・・・

お母さんにとってどんな絵がよい絵でしょうか。絵の展覧会にいったことがありますか。あるいは、画集を眺めたことがありますか。日曜日などに、新聞に大きく有名な画家の絵が色刷りで掲載されているのをじっと見詰めたことがあるでしょうか。そのようなときに、どの絵がよい絵なのか、迷うのではないでしょうか。お母さんにとって、こんな絵がよいなと思っても、お父さんの意見はちがうかも知れません。まあ、どうしてこんな絵がよい絵なのだろうかと思ってしまうことがあるでしょう。絵を評価するのは、非常にむずかしいな―と感じたことがないでしょうか。

子どもの絵についても、児童画の先生の間で意見が分かれることがあります。Aの先生は「これはすばらしい」と賞賛しているのに、Bの先生はあまり感心しないような顔をしていることがあります。つまり、子どもの絵のよし・悪しについても簡単には言えないのです。しかし、子どもの描いた絵がのびのびしていて、画面いっぱいに力強いタッチで描かれていれば、多くの先生はほめます。それは、その子どもの情緒が落ちついていて、こだわりなく子どもの思いが表現されているからです。幼児向けの雑誌に、子どもの書いた絵が児童画の先生の選で掲載されているのを見てごらんなさい。それを見ていると、お母さんにも、どんな絵がよいかについて、お母さんなりの感想が涌くと思います。

さて、ぬり絵の髪の毛の問題ですが、髪の毛が黒と決めてかかるのは、まさにお母さんの固定観念と言えましょう。現実に、大人の人で髪の毛をいろいろな色に染めている人がいるではありませんか。また、日本にいれば髪の毛の黒い人が多いのですが、ヨーロッパには金髪あり赤毛ありで、まことに多様です。欧米の風景を写した写真集などを見れば、そのことはすぐにわかります。実は、日本の子どもは太陽を赤く描きますが、西ドイツの子どもたちは黄色く描くことが多いのです。それは、曇っている日が非常に多いためと言われています。また、日本の子どもが太陽を赤く描くのも、すでに固定観念にとらわれているとも言えるのです。太陽が赤いのは、朝とか夕方であって、日中の太陽はちがいますね。さて、どんな色をしているでしょうか。このように考えてきますと、子どもの絵の色彩についても、それがよいとか悪いとか、正しいとか誤っているとかを簡単に言えないことがわかると思います。

さて、ぬり絵のことですが、すでに一定の線で型が描かれているものに色をぬるだけの作業になりますので、子どもの創造性を伸ばすには好ましくないとされています。しかし、現在せっかく興味をもっているようなので、それを取り上げてしまってはかわいそうです。そこで、だんだんに「自由画」へと移していくことを考えてみましょう。

ぬり絵から自由画へ興味を移してあげる

第1に、児童画の先生が選んだ子どもの絵を見せるとよいでしょう。児童画の展覧会を見にいくのも1つの方法です。注意をしていますと、いろいろなところで展覧会をやっているものです。そこで、子どもがどのように感じるか。おそらくのびのびと大きく描いている絵に感動するのではないでしょうか。

第2に、大き目の自由画帳を与えてみることです。それを子どもに選ばせてもよいのですが、小さな画帳を手にとってしまうかも知れません。また、自由画に興味をもってどんどん描くようになったら、広告紙とか包装紙をとっておいてあげましょう。ダンボール箱の中にためておき、そこから自由に取り出して使えるようにしておきます。

第3に、絵を描くときの材料も、クレヨンだけでなく、マジックとか、絵の具とかいろいろと用意してあげるとよいでしょう。どれを選ぶかは、子どもにまかせます。クレヨンと絵の具とを使って面白い表現をするかも知れません。

第4に、子どもの描いた絵は、どこか適当な場所に貼ってあげましょう。

子どもがぬり絵から脱却してのびのびと自由画を描くようになるには、その心が開かれること、つまり、子どもに「自由」を与えることです。子どもを叱らないこと、子どもをしつけて縛りつけないこと。それには、お母さん自身、絵を描く気持になってはどうでしょうか。

 

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