幼児語というのでしょうか、「先生」が「ちぇんちぇい」になってしまいます

 「2年保育の幼稚園に通っている男の子です。体格はよく、元気旺盛で別に心配なところもないのですが、ただ1つときどき幼児語というのでしょうか、サ行などの発音ができず、例えば「先生」を「ちぇんちぇい」としか発音できません。無理に練習させて神経質な子にしてはいけないと時期を待っているのですが、放っておいてもなおるものでしょうか。子どもを萎縮させないような適切な指導法をお聞かせくださいませ。」

幼児語はふつう6歳を過ぎるとだんだん消えます

子どもによっては、発音にほとんど乱れがなく言葉を発達させていく子どももいますが、かなり乱れがひどい子どもがいます。とくに多いのは「チ音化」と言って、「サ行」が「タ行」になる例で、「先生」が「ちぇんちぇい」になるのはごくふつうに見られます。

その原因についてはまだ十分に解明されていませんが、昔から舌の回りが悪いと言われているように、口腔の容積と舌のバランスがとれないことが原因ではないかと考えています。幼児は、顔面頭蓋が小さいと言われているように、口を開いたときの高さが大人とはくらべものにならないくらいに低いのです。ですから、舌が自由に動かせないことになるわけで、舌の回りのよい子どもはそれが比較的高いのではないかと思われます。

口を開いたときの高さが高くなるのは、下顎が発達し始めるころで、ちょうど6歳は丹臼歯(学校臼歯)が生え始めるころです。そして、そのころに、言葉の乱れの残っていた子どもにも、その乱れが消えていきます。ですから、大部分の子どもは、発音に乱れがあってもそのままにしておいてよいのです。もちろん、お母さんをはじめとして家族の人たちが正しく発音していることは大切で、子どもの話し方がかわいいので、ついそれをまねて子どもと話し合っていると、乱れが続いてしまいます。それは、方言でも「先生」を「しぇんしぇい」と言う地方があることでわかるでしょう。つまり、家族でも地域でも正しい話し方を子どもに聞かせてさえいれば、言葉の乱れは年齢とともに少なくなり、ついに消えていきます。

言葉の乱れがいつまでも続くようなら

ただし、ごく一部ではありますが、脳障害のある子どもの発音の乱れについて注意している必要があります。私たちは、子どもの言葉の乱れがどのようになっているかについて、「し→ち」「こ→と」といった具合に、乱れを書いておいてもらい、1、2ヵ月に1回面接して、乱れがどのように変化していくかを検討することにしています。そして、同じ乱れがいつまでも続くようであれば、言語療法士に頼んで治療してもらうことにしています。言語療法士は、相手が幼児であれば、まず子どもと仲よしになる努力をしますし、治療は子どもといっしょに遊ぶ中で行なわれます。この点を考えますと、家庭で教育すると、子どもに劣等感をもたせるなどの危険性があります。自分が話をすることに抵抗感をもってしまうことがあるからです。

しかし、言語療法士がいなかったらどうしたらよいでしょうか。小学校に「ことばの教室」を開いているところがあり、もし近くにあれば、そこの先生が治療にあたってくれるかもしれませんし、あるいはよい人を紹介してくれるかもしれません。

「ことばの教室」がなかったらどうしたらよいでしょうか。お母さんが読んでもわかりやすい2つの本をご紹介しておきましょう。

○チャールズ・ハナム著 西尾・白岩訳
『知恵おくれの子を持つ親のために』相川書房 1,500円 昭和59年12月
この本は、ちえおくれの子どもをもっている家族と親しくつき合いながら、インタビューをしたときの非常に具体的な記録です。イギリスの家族ですが、実生活の中で障害児をもつ親たちの苦悩がまざまざと語られる中で、建設的な提言がなされています。そして、家庭に対するサービスがどんなに大切であるかを指摘しています。イギリスとわが国とではいろいろなちがいがありますが、この本から多くのものを学びとることができます。この本を読んだお母さん・お父さんが結束して事に当たれば、行改を変えることができる―そんな勇気を与えてくれます。

○三木安正編著
『精神停滞者の生涯教育』日本文化科学社 2,200円 昭和51年7月
この本は、ちえおくれの子どもの教育に生涯を捧げた三木安正氏が、昭和20年代に旭出学園を創立し、25年を歩んできた記録です。その中で、第3章の「子どもと取り組む先生たち」は、16人の子どもの記録ですが、子どもたちの具体的な例が書かれており、それらの子どもの教育に当たる先生の努力によって、子どもたちがいかに伸びていくかが述べられています。さらに、第4章では、教育の理念が語られていて、身辺生活の自立や集団生活への参加、そして、生産人としての自立と行動について述べられており、ちえおくれの子どもをもつ両親の励ましとなるでしょう。




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