知能指数は平均以上なのに、成績が悪いのです。どういうわけでしょうか
| 「小学校2年生の男の子ですが、知能指数は普通以上あるというのに学校の成績がとても悪いのです。先生は「わかっているのですから、落ちつきさえすればもっともっとできるはずです」とおっしゃいます。プラモデルなど自分の好きなものを作るときはとても一生懸命なのですが、学校では落ちつきがなく、また何事をするにも長続きせず、することがのろいのだそうです。私があまり口やかましく言うので落ちつきがなくなったのでしょうか。知能指数がよいのに、成績が悪いのはどういうわけか、お教え下さいませ。」 知能指数は学校の成績に必ずしもつながりません 知能テストの成績のよい子どもの学業成績については、関係があるように言われてきましたが、それは平均を出した研究によるもので、個々の子どもに当たって研究してみますと、すぐにそうとは言えないのです。それは、知能テストで測定してる知能は、知能の一部を測定しているのであって、不完全なものですし、知能の本質にもまだわかっていない面があるからです(82ページ参照)。 この子の問題は、落ちつきがないこと、長続きがしないこと、のろいことなどが、学校の先生の気になる点としてあげられていることにあるわけですが、家庭では自分の好きなことだと熱中するわけですから、必ずしも長続きのしない子どもではないことがわかります。 学校で落ちつきのないことの原因を考えてみますと、2つのことをあげることができます。それは、小さいときから口やかましく干渉されてきた子どもの場合です。子どもが興味をもったことに注意を集中して遊ぶのはどんなことをしているときでしょうか。それは「いたずら」をしているときで、この「いたずら」をしているときの子どもの姿を見ていますと、実によく研究していることがわかります。ですから、児童心理学では「いたずら」のことを探索欲求にもとづく行動(探索行動)と名づけて大切にしています。ところが、この「いたずら」を悪いことのように思って、叱ってやめさせてしまうお母さんやその他の家族がいます。そうなると、研究心はだんだんになくなってしまい、じっくりとものごとに取り組めなくなります。 また、あれをしてはいけない、これをしてもいけないなどと口うるさく言われてきた子どもは、何かをするに当たって、いつもそうしたお母さんの声が聞こえてきて、落ちつけなくなってしまうのです。もしこれまでの育て方が口やかましいほうだった―というのでしたら、その状態を取り除く努力を、お母さん自身が始めて下さい。「お母さんは何も注意しないから、自分で考えてやってちょうだい」と、子どもに「自由」を与えるとともに「責任」の能力を育てるのです。私は、これを「無言の行」と呼んでいます。「行」というのは修行という意味で、お母さんは非常に苦しい体験をすることになるからです。子どものすることを見ていますと、つい、あれこれと言いたくなるものです。それをぐっとがまんするのですから、お母さんの心は葛藤状態になるでしょう。しかし、それを克服したときに、子どもに対しておおらかなお母さんに変わっています。しかし、その修行は半年から1年は続けることが必要です。 干渉をやめると落ちつきが出て、自分から勉強に取り組みます そのようなお母さんの努力が続けられますと、子どもには、自分の行動に対して「責任」をもつ態度が表れてきます。始めは芽ばえに過ぎませんが、だんだんにその能力はひろがってきます。そして、お母さんがあまり口を出さなくても、自分の生活を整え、勉強にも自分から取り組むようになります。また、お母さんにも、こんなときには提言したほうがいいな―という部分が見えてくるのです。この点は、お母さん自身が「無言の行」に努力して、苦しい思いを乗り越えないとわかりません。 なお、落ちつきのない子どもの過去の成育史を調べてみますと、スキンシップが少なかったという例が少なくありません。ことにしつけにやかましいお母さんやお父さんは、子どもをひざに抱いたり、添い寝をしてあげることは、甘やかしになると考えていますから、子どもがからだで甘えてきても拒否しています。そのために、親子間の情緒的な結びつきができず、子どもの情緒は不安定になっている例が少ないのです。その上、成績第一主義のお母さんは、しょっ中そのことで子どもを責めるようになってしまいますから、子どもの情緒はますます不安定になり、落ち着かない行動が目立ちます。もし、スキンシップが不足していたならば、小学校2年生であっても、学校から帰ってきたら、しばらくの間お母さんのひざの上に乗せてあげて下さい。そして、楽しいお話をして下さい。添い寝もまた有効です。学校から帰ってきた子どもをつかまえて、「勉強は?」「宿題は?」などと絶対に言わないように。 |
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