知能テストが中の下だと言われました。知能指数をどう考えたらいいのでしょうか
「今年1年に入学した6歳の男の子ですが、幼稚園で知能でストを受けたとき、先生から「理解力がなくて中の下だ」と聞かされました。そう言えば7歳になる姉にくらべて、とてもおぼえが悪いような気がします。でも身の回りのことは人並みに自分でできますし、粘土とプラモデルだけは一生懸命に完成させます。知能指数をどのように考えたらよいものでしょうか。これから勉強も始まることですし、どのように指導していったらよいか、お教え下さいませ。」 知能テストでは頭のいい悪いは判断できません 知能テストによって、不幸にされている子どもが少なくありません。それはなぜでしょう。 第1に、知能テストといわれているテストが、知能の一部をはかっているに過ぎないのに、それを絶対視してしまう人がいるからです。幼稚園の先生が、「中の下」などといったのは、まさにその表れと言ってよいでしょう。また、知能の定義については、学者の間でもまとまった見解がないのです。つまり、知能とは何かがはっきりしていないのです。 とくに幼児の場合、その精神発達の過程には個人差があります。ある子どもは発達が早く、ある子どもはゆっくりと発達していきます。その点を慎重に考慮して、幼児に対して行なわれているテストは、知能テストといわずに、発達テストというべきだと古くから主張されているのです。つまり、そのときの子どもの精神発達の状態を示すものであって、いわゆる頭のよし・悪しを言ってはならないというわけです。先生から「中の下」などといわれたお母さんの中には、反発する気持にもなる人がいるでしょうか、「内の子は頭がよくない」などと思いあきらめてしまうお母さんもいるでしょう。 第2に、知能テストを誰がやったかについて問題にしなければなりません。テストというものは、それに習熟した人が実施して初めて、その結果についてある程度の信頼感をもつことができますが、習熟した人が実施したテストでも、判断にちがいが生ずることが少ないのです。もし、幼稚園の先生がテストを実施したとなれば、私どもはその結果を信頼する気持ちにはなれません。その意味で、園内で知能テストをすべきではないのです。 ちえおくれではないのに、ちえおくれとされる例も 第3に、知能テストは、その子どもの性格に左右される面が少なくないのです。最近、私は、就学前の知能テストで、ちえおくれ(精神衰弱)と診断された2人の子どもと遊んでみました。すると、ちえおくれではないことがはっきりしました。1人の子どもは、はずかしがりやで、いわば内弁慶の外すぼみ。見知らぬ人の前に出ると何も言わなくなってしまうような子どもでした。私たちは、時間をかけてその子どもと遊びながら心をほぐしていくうちに、活発に遊ぶようになりますと、実にいろいろなことかできるのです。全くちえおくれがないことがはっきりしました。 もう1人の女の子は、いわば情緒の閉塞しているような子どもでした。顔には全く表情がなく、くすぐっても笑おうとしなかったほどでした。しかし、1時間半もかけてスキンシップを実現しているうちに、少しずつその子のかたい心がほぐれてきました。少しでしたが、笑いも表れてきたのです。そのような状態の中でその子どもの遊びを観察していますと、知的能力がふつう以上にあることがだんだんはっきりとしてきました。成育史についていろいろと調べてみますと、その子どもは家庭の中でお母さんとのスキンシップがほとんど泣く、むしろお母さんから拒否される経験が多かったために、かたくなに心を閉ざしてしまい、知能テストのときに何かを聞かれても、多くを答えようとしなかったことがわかりました。保育所の先生がその子どもと一対一でいろいろなかかわり方をしてくれましたので、1、2ヵ月のうちに表情も豊かになり、非常なおしゃべりになりました。先生の目にも、その子どもの知能がおくれていないことがはっきりと映ったそうです。 子どものころに知能がおくれていると先生に言われてた子どもが、お母さんの力によって大発明家になった例があります。それは、エジソンです。お母さんは、うちの子には見どころがあると信じて教育したのでした。私どもは「自閉症」といわれている子どもの治療教育を行なっていますが、知能テストをしてみますとほとんど応じません。それは、テストには興味がないからです。そのために、重度の精神薄弱と診断されている例があるのです。ところが、その子どもが興味を示したものに対してどのように操作するかをよく観察してみますと、実に手先が器用であったり、対象の細かい部分まで観察していることに驚かされることがあります。 教育にしても、保育にしても、子どもの「よさ」を発見してそれを伸ばす仕事です。そのことを理解している先生は、知能テストなどはしませんし、かりにしたとしても、その結果にはこだわりません。 |
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