学校ではおしゃべりばかりして叱られます。いくら注意してもなおりません

「1年生の男の子ですが、家にいるときはあまりおしゃべりをしませんのに、学校へ行くとおしゃべりばかりしているのです。それが授業中も続くものですから、先生に「口から生まれてきた」といつも言われています。そして、いくら注意しても、おしゃべりがやまないのです。私が家で洋裁をしていて、なかなか話し相手になってやれないので、そのせいではないかとも思いますが、いかがでしょうか。」

家での欲求不満を学校で発散させているのでは・・・・・・

子どもは、心の発達の経過において、いろいろな面を現します。おしゃべりにしても、例えば3歳から4歳にかけては、何かにつけてお母さんに聞いてもらいたくて、うるさく話しかけるようになるものです。おしゃべりの子どもは、自分で思っていることを他人に聞いてもらいたいという気持をもっていますから、無口な子どものように自分の心を閉ざしているのとくらべますと、明るい子どもが多いものです。

学校でおしゃべりで、家にいるときにはそうでないとすれば、お母さんが子どもの話をゆっくりと聞いてあげる時期が少なかったことが考えられます。とくに3歳から4歳のころにお母さんに聞いてもらいたいことがあっても、お母さんの仕事が忙しいために、「あとで」とか「今はダメ!」などと言われてしまいますと、子供にしてみればおしゃべりをしたい気持を現すチャンスを失ってしまうわけです。あとから「さっきのお話はなあに?」と水を向けてみても、「何だっけ」ということになってしまうことがしばしばです。お母さんにしてみれば、大したことでないのに―と思うかも知れませんが、子どもにしてみれば、おしゃべりの内容よりも、情緒的な結びつきを求めて、お母さんとおしゃべりをしたいのです。そうした子どもの気持を汲むことのできるお母さんは、ちょっと手を休めて子どものおしゃべりを聞いてあげています。

子どもには、お母さんの仕事がどのように運んでいるのか、年齢が低ければ低いほど理解できません、「今、忙しいんだから」と言っても、その内容は全くわからないでしょう。例えば、お母さんが夕飯の仕度をしているときに、「お母さん、お母さん」と背後から呼んでいたら、お母さんとしてはどのような対応をしたらよいでしょうか。「今はダメ!」「あとで」という言葉は、お母さんにとっては拒否的になります。「うるさいね」という言葉もさらに強い拒否です。こうした言葉を言わないで、何とか子どもとの情緒的な結びつきをつけるにはどのようにしたらよいでしょうか。いったんは、子どもの顔を見て目を合わせることです。そして、手がよごれていたら、「この手がつくぞ」と子どもの顔の前に差し出してみます。子どもは、「わあっ」といって引き下がるでしょうが、ふざけたくてまた寄ってくるでしょう。しかし、2、3回ふざけあってから、「あとでね」といえば、子どもはお母さんの状態が具体的にわかりますから、あとでおしゃべりをしようという気持になるでしょう。こうした対応の仕方のほかに、お母さんによってはいろいろな試みができると思います。子どもと対応していて、お母さんのちょっとした創意工夫が遊びを作り出し、子どもの気持をなごめます。

子どもが話しかけてきたとき、うるさがっていませんか

さて、学校でおしゃべりのお子さんについては、過去におけるお子さんとお母さんとの情緒的な結びつきがうまくできず、子どもの側ではお母さんとおしゃべりをすることを断念しているのではないかと思います。ですから、2、3ヵ月の間、子どものほうでおしゃべりをしたい様子が見えたら、仕事の手を休めて、よく耳を傾けてみましょう。お母さんに自分のおしゃべりを聞いてもらえるとなると、お子さんはどっとしゃべるようになるかも知れません。つまり、これまで溜まっていた気持を吐き出すことをします。それに伴って、学校でのおしゃべりは少なくなっていくでしょう。  

なお、お母さんとしては、仕事をしながらおしゃべりを聞いてあげようとするかもしれません。忙しいので、それもやむを得ないことがありますが、子どもにしてみればじっくりと聞いてもらいたいこともあるのです。立場を逆にして、お母さんが子どもに話を聞いてもらいたいときに、子どもが何かほかのことをしながらその話を聞こうとしたならば、お母さんは、態度が悪いとかふまじめだなどと言って、子どもを叱るのではないでしょうか。その点も考えながら、子どものおしゃべりを聞いてあげたいものです。とかく親たちは、子どもにいろいろと注文をしますが、その注文については、自分自身もまた努力しなければならないことをよく心に留めておいてほしいのです。そうした親の努力している後ろ姿を見て、子供は育っていくのです。

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