気が弱く、いじめられて、学校がいやだと言い出しました
| 「1年生の男の子です。今ではからだは元気なのですが、小さいときに弱かったせいか、とても気が弱いのです。それで学校でもいじめられるらしく、消しゴムを取られても何にも言えず、取り戻すこともできないでいるのです。そんなふうですので、このごろでは学校がいやだと言うのです。大きくなってこんなことでは困りますので、何とかして気が強くなってくれたらと思います。このような子をどう扱ったらよいものかお教えくださいませ。」 お母さんにやっていただきたい「無言の行」 このような子どもに対して、「もっと強くなりなさい」とか「やり返しなさい」などと言い聞かせるお母さんやお父さんがいますが、そのようなお説教で子どもの気の弱さがなおるものではありません。このような子どもにしたのは過去の親の育て方にあり、生まれつきのものではありませんから、育て方を根本的に変える必要がありますし、それが実現されれば、子どもは意欲的な子どもに変わります。 では、なぜ気が弱いのでしょうか。それには2つの原因がまじり合っています。1つは過保護、もう1つは干渉です。過去においてからだが弱かったりすると、どうしても過保護になります。1日の子どもへの対応の中で、つい子どもに手を貸してあげてしまっている部分はないでしょうか。食事についても、すべてお子さんに「まかせて」いるでしょうか。あれこれと口出しをしているようなことはないでしょうか。あれをしなさい、これをしなさい―を口出しをすることが干渉です。もう少ししますと、つまり2年生になって、お母さんに対し「うるせえな、黙っていてくれよ」と言えるようになりますと、自発性が発達してきていることを意味しますが、そのように言える子どもにするためには、過保護も干渉もだんだんに少なくするお母さんの努力が必要です いっぺんお母さんにやっていただきたいのが、私の提唱している「無言の行」です。「無言」というのは、命令的な口出しをしないという意味です。「行」とは修行のことです。簡単にできそうですが、始めてみると実に大へんなことに気づくでしょう。 まず、子どもに対して、「今日からお母さんは何にも言わないようにするから、朝起きてから夜寝るまでを自分で考えてやってごらん」と宣言します。1年生の2学期以後がよいと考えています。そうした宣言をしますと、多少は不安になる子どももいますが、お母さんのうるささから解放されてせいせいした顔つきになる子どもが大部分です。 ところが、お母さんのほうは大へんです。衣類は脱いだまま、ランドセルは放り出したまま、宿題はやらなくなるし、テレビばかり見ている、忘れ物は多く学校の先生から注意がくる、手洗いもしない、歯も磨かない、入浴も面倒がる―といった状態になるからです。そして、黙っていることができなくなって、爆発してしまうお母さんが大部分です。爆発しないように耐える―これが「行」を意味します。 お母さんが口を出さなくなってから、子どもの生活がすっかり乱れてしまった―ということは何を意味しているでしょうか。それは、お母さんに言われるからやっていたまでのことであって、子どもの自発性はまったく発達していないことを意味するわけです。ですから、本当に自発性の発達を援助するにはどうしたらよいかを考え直すよい機会だと思います。 3ヵ月から半年で子どもが変わってきます 「無言の行」を続けますと、子どもの生活は、1、2ヶ月は混乱します。しかし子どもには少しずつ変化が生じます。お母さん・お父さんが前向きに生活してさえいれば、「こんな生活をしていてはダメだ」という気持が少しずつ育ってきて、それが毎日の生活の中にも反映されます。宿題だけは何とかやっていくことを始めたり、テレビを視聴する時間を決めたりします。衣類やランドセルも片づけておかないとあとで不便だ―ということもわかってきます。小学校低学年の子どもですと、3ヵ月から半年すると、ほとんどのことを自発的にするようになりますから、お母さんが口を出す部分は非常に少なくなっています。これは、「無言の行」をやり通したお母さんが異口同音に言いますし、つい口を出してしまって、子どもから「言わないって言っただろう」とやり返されて、爆発寸前までいったり、ついに爆発させて後悔したりしています。 私が、この方法を提唱するようになったのは20年ぐらい前からですが、それは中学生や高校生の登校拒否が、自発性の発達が著しくおくれていることを知り、すべてを子どもに「まかせる」という治療法を用いれば、子どもが立ち直ることを経験したからです。「まかせる」ということは「ほうっておくこと(放任)」ではなく、子どもに「責任の能力」を育てることで、その能力はどの子どもにも内在しています。 |
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