　大へんな甘えん坊で、朝から晩まで私にくっついて離れません

「満４歳になる女の子ですが、とても甘えん坊なのです。１人では決して遊ばず、朝から晩まで私にくっついて離れません。春になれば幼稚園に入るというのに、これでは困ってしまいます。どのように言い聞かせたら、私から離れて友だちと遊ぶようになるでしょうか。甘えん坊の扱い方をお教えくださいませ。」

子どもの心の中に不安があるのです

３歳になるまでは、お母さんにからだで甘えること、つまり、抱っこやおんぶや添い寝を要求する子どもが「よい子」ですし、それを受け入れてあげることのできるお母さんが「よいお母さん」です。つまり、お母さんにからだで甘えることのできる子どもは、情緒が安定しており、お母さんを心の基地にしていますから、思春期以後になって家出をしたり、非行に走ることはありません。非行に走る子どもは、心に基地をもっていないのです。それは、３歳になるまでに、さまざまな理由から、お母さんとの間にスキンシップが実現できず、その後においてもその機会がなかったからです。

しかし、３歳まで甘えん坊であっても、自発性の発達している子どもには、その後４歳までの間に、自分から進んで友達を求め、いっしょに遊びたいという気持が強くなるものです。そうした子どもの発達を考えて、幼稚園は３年保育になっているのです。　

ところが、４歳になってお母さんにくっついていて１人で遊ばないという子どもの気持は、どういう状態にあるのでしょうか。それが不安であることはだれが見てもわかることだと思います。

では、なぜ不安があるのでしょうか。それには、２つのことを考えてみる必要があります。その１つは、それまで過保護に育ててきたことです。過保護とは、その年齢の子どもであれば子どもに「まかせて」、手を貸さないようにしなければならないのに、お母さんが手を貸してしまっている育て方を言います。例えば、１歳ごろから、子どもは１人でスプーンをもって食べたがります。ところが、子どもにさせると、こぼして散らかしたり、いたずらを始めてしまうので、お母さんがスプーンを取り上げて食べさせているうちに、子どもにはお母さんが食べさせてくれるものという気持（依存心）が強くなって、自分では食べようとしなくなってしまう子どもがいます。衣類の着脱にしても、早くきちっと着せたいとなると。子どものしていることを見守っていることができず、お母さんがすっかりやってあげているうちに、子どもはお母さんのすることのように思い込んで、自分ではしなくなってしまいます。つまり、お母さんは子どもの侍女になっているのです。子どもは、侍女がいないと生活できませんから、お母さんにくっついているわけです。

このようなお子さんの自発性を育てるためには、お母さんにとって最もやりやすい生活習慣上の何かを取り上げて、子どもに「まかせて」みることです。最もやりやすい―というのは、子どもに対して「自分でやってみては」と言ったときに、子どもがそれに応じてくれそうな項目を選びましょう―という意味です。子どもとの間でトラブルが起きやすい項目は、できるだけ後回しにして、１つに成功したならば、次のことを―といったぐあいに、ゆっくりと進めていくことが大切です。急ぐと、かえって子どもの不安が強くなりますから、ゆっくりと進めましょう。

家庭外での生活を多く体験させてください

こうした生活習慣のしつけに当たっては、お父さんの協力も必要です。つまり、お母さんの手が離せない仕事をしているときに、「パパがやってあげよう」と言ってやってくれますと、子どもはお母さんべったりという状態から少しずつ離れていきます。ところが、残念なことに、お父さんの協力が得られないばかりか、２人の間がしっくりといっていない夫婦関係の例が少なくないのです。休日などに親子３人で外出するようなことがなく、母と子とでひっそりと家の中にばかりいる―というようなことはないでしょうか。さらには、お父さんとの間の気持の結びつきができない代償として、子どもをじっと抱いていたいという気持がないでしょうか。子どもはそうしたお母さんの不安を感じ取って、お母さんにすがりついているということがあります。

こうした状態を打開するためには、お母さん自身がお友だちのところへ子どもといっしょにいくとか、遊園地で子どもといっしょに遊びながら、ほかの子どもが遊んでいる姿を見せるとか、とにかく家庭外での生活を多くすることが大切です。ところが、お母さんの中には外出が嫌いな人がいて、なかなからちがあかないことがあります。その場合にはカウンセリングが必要になるでしょう。