　内気で小心。答えがわかっていても手を上げて発表できません

「小学校２年生の長女ですが、内気で困っております。テストはとてもいい点を取ってくるのに、教室で手を上げて答える発表の回数が少ないのです。まちがっていたら笑われるとか、先生に叱られるとか、周囲の圧力みたいなものを感じて、つい手が上がらないらしいのです。どうしてもっと大胆になれないのでしょうか。テストの点がいいのですから実力は十分あると思うのです。こういう内気な子をどのように指導したらいいでしょうか。」

まちがった「しつけ」は子どもを内気にします

このような子どもは、もし答えがまちがっていたら笑われるのではないか、変な答え方をして先生に注意されるのではないか―と思ってしまうのです。つまり、心に「こだわり」とか「気がね」があるからです。心に「自由」がないと言ってもよいでしょう。

なぜ内気なのでしょうか。それは、お母さんが、子どもの「こだわり」や「気がね」を育ててしまったからです。「しつけ」がまちがっていたのです。

「しつけ」には、３種類のものがあります。１つは、命令的圧力によるしつけです。これは、「○○をしなさい!」「それをしてはいけません！」などと命令的に言い、それに素直に従わないと、叱ったり叩いたりしてしつけるやり方です。そのようなお母さんは、子どもに「すなお」であることを望んでいます。そうなると、子どもの自発性の発達にとって非常に大切な意味をもっている「反抗」ができなくなってしまいます。お子さんには、２歳から３歳にかけての「第１反抗期」があったでしょうか。この反抗期には、お母さんが命令調で言うと、「イヤだ！」と言い、服の着替えなどを手伝おうとすると、「自分でする!」と言ってその手を払いのけるものです。このような反抗状態が現れ、それを「よい子」として認めてあげることによって、子どもの自発性や意欲が順調に発達して、積極的な学校生活を送るようになります。

また、小学校２、３年生のころ、自発性が順調に発達している子どもは「中間反抗期」に入ります。つまり、親たちに向かって「口答え」が多くなり、何かのことで子どもに注意をすると、「お母さんだってやっているくせに!」と言うようになるでしょう。これは、親を批判する能力が芽ばえてきたことを意味します。えらいと思っていたお父さんやお母さんにも、やっぱりいろいろな欠点があるということが見えてくるわけです。そのときに、謙虚なお母さんは、子どもに言われると、やっぱり自分にもいろいろと欠点があることに気づくでしょう。ですから「お母さんもへまをやるね」と言います。それによって、子どもにもだんだんに反省する力が育っていくのです。

ところが「口答え」を悪いと思っているお母さんは、「親に向かってなんです」と言って叱るでしょう。これは、傲慢な心がそうさせているのです。しかも、封建社会（タテ社会）では、親に「口答え」をすることは最も悪いことであり、親不孝と言われてきたことの意識があるからです。そうした「しつけ」が民主的な家庭を望んでいる現在でも残っていますから、「口答え」をする子どもを叱るでしょうし、「口答え」をしないですなおに親の言うことを聞いている子どもを誤って「よい子」のように思っているわけです。

民主的な家庭を作っている欧米では、子どもに対し、「自分の意見をはっきり言いなさい」と小さいときからしつけていますし、その中に「イヤだ　ｎｏ！」も含まれているのです。ですから、親たちは、子どもに「すなお」であることを望みません。その点で、わが国の親が子どもに望む第１の性格が「すなお」であるのと対照的です。すなおな子どもは、親に服従して生活を送っているのですから、自発性のおくれている子供なのです。

しつけのもう１つの種類は、「○○さんが見ていますよ」とか「○○さんにわらわれますよ」といったように、他人を引き合いに出してのしつけです。これは、「個性」を大切にしている欧米の親たちの「しつけ」の中には見当たりません。他人の目を気にするようにしつけると、「気がね」の多い子どもになってしまいます。つまり、友だちや先生がどう思うかが気になって、どうしても内気になってしますのです。

お母さんの考え方を１８０度転換する必要があります

内気な子どもをどのようにして積極的な子どもに変えることができるか―それは、子どもに「はきはきしなさい」などとお説教することではありません。お母さんのこれまでの育て方の誤りから「内気」が生じているのですから、「よい子」についてのお母さんの考え方を１８０度転換する必要があります。その点で、第１に「反抗」を大切にしましょう。お母さんに対して「口答え」が多くなるとともに、学校でもはっきりと手を上げて答えるように変わってくるでしょう。