なんでも友達の言うがまま。もっと自己主張のできる子になってほしい

「5歳2ヵ月の男の子ですが、見ていてはがゆいことばかりなのです。例えば遊園地で遊んでいるときも、友だちがジャングルジムで遊ぼうといえば、自分はもっとすべり台ですべりたくても「ウン」と言ってついていきますし、砂場でうちの子が一生懸命トンネルを作っているのをグシャッとつぶされて、「トンネルはもっとこっちへ作るんだ」と言われれば、言われたままにまた作り直しています。このように何をしていても友だちにゆずってしまうのです。もっと自己主張のできる男らしい子になってもらいたいのですが・・・・・・。」

自発性が発達していないと自己主張はできません

このようなご質問を受けるたびに、お母さんがお子さんの性格として第1に望んだのが「すなお」ではなかったかしらと、質問したくなります。と言うのは、お子さんが友だちに対して「すなお」であるからです。

わが国では、子どもに対して「すなお」であってほしいと望んでいるお母さんが非常に多く、それは、自分の言うことを「すなお」に聞いてほしいというまことに身勝手な要求であることが多いのです。

お母さんが子どもに「すなお」であってほしいと望むのはなぜでしょうか。第1に、封建社会での「しつけ」がそうであって、今日もそのような「しつけ」がたくさんに残っているからです。お母さんの意識を点検してみますと、意外に多く見つかるものです。第2には、すなおにお母さんの言うことに従ってくれれば、お母さんとしては扱いやすいからです。お母さんにとって扱いやすかったという子どもが、中学生や高校生になって登校拒否を起こしているのです。

私は、冗談を含めて、未熟な人格の持ち主がいつの間にか親になって、子どもから「お母さん」「お父さん」と呼ばれる立場に立つわけで、もしそうした未熟な親たちの言うことを「すなお」に聞いているような子どもがいれば、さらに未熟な人格の持ち主になってしまう―と言っています。お母さん自身、あるいはお父さんもまた、自分の人格の未熟であることに気づけば、決して、自分の言うことを「すなお」に聞け―などとは言えませんし、えらそうにお説教を言うこともはずかしく思うでしょう。お説教の内容について、お前さんはそれができているのか―と問われたら、答えられないことが多いのではないでしょうか。

子どもに対して「すなお」を要求すれば、当然、子どもの自発性の発達はとまってしまいます。いたずらもなかった、反抗もしなかった―ということで、友だちと遊び始めれば、自己主張はできません。自己主張は、自発性が発達しなければ実現することはできません。

親に「反抗」できるようにしてあげる

そこで、自己主張のできる子どもにするためには、親に対して「すなお」であってほしいという願いを払いのけることが第1です。親に対して「反抗」ができるようにしてあげることです。お母さんが子どもに何かを頼んだときに、「イヤだ!」と言えるようになったならば、しめたものです。それは、機会をねらっていれば必ずやってくるものです。子どもが「イヤだ!」と言ったときに、以前であれば「悪い子」として叱ったりたしなめたりしてきたお母さんが、「あらそう」といって、子どもの「イヤだ!」という自己主張を認めてあげればよいのです。「イヤだ!」と言ってもお母さんが叱らないことがわかりますと、一時的には何かにつけて「イヤだ!」を言うでしょう。2歳から3歳にかけての「第1反抗期」がめでたく実現できたのです。それを受け流していくうちに、反抗が減っていきます。それとともに、友だちに対しても自己主張を始めますから、「けんか」が多くなります。「けんか」は自己主張のぶつかり合いだからで、「けんか」のできる子どもには自発性の発達が順調に営まれていると言えるわけです。

ところが、幼稚園の中には、「いつも仲よく」などの標語をかかげ、「けんか」をする子は「悪い子」のように言う先生がいますが、そのような園にいると自発性の発達は抑圧されてしまいます。「けんか」は、よほどの危険のない限り、子どもたちに「まかせる」ということが必要で、このことはお母さんに対しても提言したいことです。つまり、お母さんが「けんか」を悪いことと思っている限り、自己主張はできないでしょう。子どもが自己主張をすれば、必ずと言ってもいいくらいに「けんか」を始めるでしょう。そのように「けんか」をくり返しながら、どのようにすれば「けんか」をしないで遊ぶことができるかがわかってきます。

友だちに対して自己主張のできる子どもにするためには、まず、お母さんに対して自己主張にもとづく反抗のできる子どもにすることです。それには、これまでの「しつけ」が子どもの自発性の発達を抑圧していなかったかについて、お母さん自身、反省することから始めましょう。

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