とても理屈っぽくなり、困っています。友だちにも嫌われて、遊んでくれません
「5歳の男の子ですが、1年ぐらい前から、とても理屈が多くなり、ほとほと困っております。そのつどわかりやすいように話はするのですが、いっこうになおりません。そのためでしょうか、近所の同じ年頃の子どもとも遊ぶたびにけんかをして、近ごろではいっしょに遊んでくれなくなってしまいました。この様子では幼稚園でも誰も遊んでくれないのではないかと心配しています。この理屈っぽさをなおすにはどのようにすればいいでしょうか。」 頭でっかちの子どもは将来が心配です 子どもは、年齢が低ければ低いほど、情緒的な存在です。情緒的な存在とは、うれしいとか楽しいとか、悲しいとかくやしいといった気持を表現しながら生活することが多い―という意味です。4歳前後から、なぜ―とか、どうしてと質問をすることが多くなりますが、それは正しい科学的な答えを求めているというよりも、質問に答えてもらうことの楽しさを味わっており、お母さんやお父さんとの間の情緒的な結びつきを楽しんでいるのです。ところが、お母さんやお父さんの中に、子どもの質問に対しては、科学的に正しい答えをしてあげなくてはならないように思っている人がいます。そのようなお母さん・お父さんは、それがあからさまでなくても、知的な面を伸ばそうと考えているものです。そして、子どもが科学的な知識をもっていることがわかりますと、うれしさを隠し切れないで、ほめてしまうでしょう。ほめられれば、誰でもうれしいものです。子どもも、お母さんやお父さんにほめてもらいたくて、知的な面に心を向けてしまい、非常に理屈っぽくなります。そして、頭でっかちとも、物識り博士ともいわれるような状態になってしまいます。 子どもの人格形成にとって何が1番大切かと言いますと、情緒です。情緒が安定しており、だんだんにそれが発達していくことです。人間は感動の動物と言われているように、感情または情緒の乏しいことは、人格にとって大きな欠陥となり、それが思春期以後になっていろいろな形で問題を起こすことを、私はたくさんに経験してきました。しかし、情緒が安定しているかどうか、順調に発達しているかどうかをはっきりと見て取る方法がないために、お母さん。お父さんにはわかっていないことがあります。 その点で、私は表情が豊かかどうか、よく笑うかどうかを1つの指標にしていますが、もう1つ大切な指標は、お母さん・お父さんに対してからだで甘える子どもがどうかです。これまでの成育史の中で、お母さんやお父さんのひざによく乗ってきたかどうか、添い寝を求めてお母さんの布団に入ってきたかどうか、現在も、ひざの上に乗ってきたりからだを寄せてきて甘えるかどうか―つまり、スキンシップが表現できていれば、情緒の面で順調に発達していると見てよいでしょう。私の経験では、そのような子どもはあまり理屈をいわず、ふざけたりおどけたりして遊びますから、お友だちもできますし、お友だちと遊ぶことを楽しみます。 もう1つの人格の柱は、意欲です。意欲のさかんな子どもは、いたずらが多いのが特徴です。なかなか奇抜ないたずらをします。また、なかなかお母さんやお父さんの言うことを聞きませんから、育てにくい面をもっています。意欲が育っていますと、3歳から4歳にかけて、必ずお友だちを求め、お友だちといっしょに遊ぶ楽しさを味わいます。その遊びの中には「いたずら」も含まれていますし、いっしょになっておどけたりふざけたりもするでしょう。また、けんかもするでしょう。そのけんかにも取っ組み合いもありますが、口汚くののしりあうこともあるものです。理屈を言い合うことはほとんどありません。 子育ての目標は「友だちと遊べる子」にすること このように考えてきますと、どうもお母さんやお父さんの子育ての方針が、知的な面に偏っていたのではないかという不安が生じます。その点で、情緒と意欲を中心にした子育てに切り替えて、しばらく知的な面については横においてほしいと願っています。このままですと、友だちを作る能力が育ちません。そして、孤独になってしまう恐れがあります。それが、思春期の危機を招きます。 お母さんもお父さんも、子どもらしい遊びができるように、お子さんとすもうをとったり、ふざけっこをしたり、ジョギングをしたりして体力をつけ、頭でっかちの子どもにならないように、努力しましょう。頭のよさや物識りでよい評価を受けてきた子どもは、そうしたお母さん・お父さんの働きかけには乗らないかも知れませんが、お2人で協力し合って努力を続けているうちに、子どもらしい子どもに変わるとともに、お友だちといっしょに遊ぶことのできる子どもになっています。お友だちとよく遊ぶことのできる子どもにする―というのが5歳児の子育ての目標です。 |
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