運動をこわがり、スケートも水泳もダメ。自転車も補助輪がないと乗れません

「小学校1年の女の子です。運動神経がにぶいせいか「こわい」という気持が先に立って何も練習できないのです。例えば、自転車を買って2年になるのですが、いまだに補助車がないとこわくて乗れません。転んでも痛くないようトレパンやトレシャツを着せるのですが、だめなのです。また自転車だけでなくスケートも水泳もこわがって始めようとしません。こうした体育に対する特別な恐怖心はどのように指導してとり除いてやればいいでしょうか。」

小さなけがを恐れて過保護になったのでは・・・・・・

運動機能(俗に運動神経と言われている能力)も、運動に対する興味も、小さいときからだんだんに積み重ねることによって発達します。つまり、一歩一歩―ということが大切で、山登りにたとえてもよいでしょう。

とくに運動機能の発達のスタートは、はいはいをしたり、伝い歩きをしたり、あんよを始めるころです。とくにあんよを始めた子どもは、ずでんと転んだり、前に倒れたりします。このような失敗の体験をくり返しくり返し重ね、それを乗り越えることによって失敗が少なくなるとともに、運動することに自身をもつようになります。ところが、運動機能の発達するスタートにおいて、「危い、危い」とおんぶや抱っこをするような育て方が多いと、子どもの運動機能の発達が妨げられるばかりでなく、「こわい」という気持が先に立って、積極的に運動をしようという意欲が弱くなってしまいます。

もう1つの時期は、あんよがじょうずにできるようになり、ひざの関節が使えるようになるころで、男の子も女の子も、高いところに登ろうとしたり、段から飛びおりてみたり、いろいろと冒険を始めます。2歳前後になると運動機能が順調に発達し、意欲のさかんな子どもは、だんだんに高い所から飛ぶことをくり返しているうちに、1メートルの所から飛べるようになるものです。もちろん、その間に転んだりすべったりして、小さなけがを経験するものですが、それを恐れずにお母さんや家族の人たちがじっと見ていますと、子どもは運動に対して積極的な興味をもつようになり、自信が生じますから、「こわい」などと言葉は言いません。初めは「こわさ」を感じてたじろいでも、この次こそはガンバロウ―という意欲をもち続け、その機会をねらっているものです。

このようにして育った子どもは、3歳から4歳にかけて、運動を好みますし、むずかしい運動にも挑戦します。

ボール投げや山歩きなど、もっと基本的な運動を

意欲の乏しい子どもの場合、必ず、「危い、危い」とか、「女の子にお転婆をさせてはいけない」などと、過保護に育ててきた家族の人がいるもので、これから運動機能を伸ばすためには、そうした口出しをしないようにしなければなりません。つまり、「危険」に思えるようなことを子どもがしても、じっと見ていることを申し合わせましょう。また、女の子だから―といった気持を整理しましょう。

そのうえで、現在の子どもの運動機能の状態に合った運動を選びましょう。野原にいってボールを投げ合ったり、蹴りっこをしたりすることから始めてはどうでしょう。つまり、幼い子どものする運動から始めることが大切です。そして、じょうずにボールを投げたとか受け取ったとか、蹴ることができたという成功感を味わうことができるようにしてあげましょう。1〜2歳からのやり直しですから、1年生の子どもにはつまらないことのように思えるかも知れませんが、子どもが興味をもち始めますと、自分なりに工夫をして、少しずつ技術を必要とする遊びへと進めていくものです。つまり、お母さんが急いで何かを子どもに「やらせる」ことをしますと、それに抵抗感を感じた子どもは、拒否的になってしまいますから、決してあせらないことです。

運動機能の基本は、歩くことですから、日曜日などにはできるだけマイカーを使わずに、山歩きをしましょう。初めは、子どもがどうやら歩き通せる距離を考えて計画を立て、だんだんにその距離をのばしていきましょう。運動のにがてな子どもは、歩き始めるとすぐに「疲れた」などと言い始めます。これは、体力の問題というよりも気力(意欲)の問題ですが、初めの計画が大き過ぎると、ますます歩くことをいやがるようになりますから、注意が必要です。

こうした運動機能の発達には、お父さんの協力が非常に効果があります。お父さんと出かける機会の少なかった子どもは、お父さんといっしょに楽しく山登りをした―ということで、歩くことに積極的な興味をもつようになります。

いろいろなスポーツクラブを利用することを考えてもよいのですが、まず、子どもの今の状態に合ったところから個別に指導することが大切です。



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