感情を外に出さず、子どもらしくないのです。勉強はよくできるのですが

「小学校1年生の長女についておうかがい致します。成績は非常によく、とくに算数がすぐれており、先生も知識の面では申し分ないとおっしゃるのです。ところが先日の個人面談のときに、子どもらしくなく、自分の感情を外に出さないと言われました。私があまり勉強勉強と押しつけるので、こんなことになってしまったのでしょうか。主人は「お前がおさえつけるから、そういう性格が作られる」と言います。そう言えば、面白いテレビを見ても、笑いが少ないようにも思われます。私の教育法について反省しているのですが、どのようにこの子を扱っていいものか、ご指導くださいませ。」

このまま成長すると思春期になって問題が・・・・・・

非常に大切なことに先生が気づいてくださったと思います。子どもであるのに、子どもらしくない―というのは、人格形成に大きなゆがみが始まっていることを意味しますし、特に感情を外に出さないということは、強い抑圧を受けていることを意味します。このまま成長して思春期以後になりますと、登校拒否を起こしたり、ノイローゼや心身症になって悩む心配があるのです。

子どもの人格形成にとって何よりも大切にしなければならないのは、感情とも情緒とも言われている人間性の柱です。楽しい、うれしい、悲しい―といった気持の動きが、情緒です。まだまだたくさんの気持がありますが、子どもはその年齢が幼ければ幼いほどすなおに表し、それが親たちに受け入れられることによって、情緒が発達します。

まず、生後半年までの赤ちゃんについて考えてみましょう。赤ちゃんは、お腹がすいたとか、眠くなったとか、どこか痛いところがある―などがありますと、必ず泣きます。泣くことによって不快感を表現しているわけですから、お母さんもお父さんも、赤ちゃんの訴えに応じて、お乳を飲ませたり、痛い部分がないかを確かめたり、赤ちゃんが眠りにつくまで抱いて子守唄を歌ったりしてあげて、不快感を快感に変えてあげることが必要になります。それによって、親に対する信頼感が育ちますし、情緒の表現も豊かになります。

また、生後2ヵ月前後から「微笑」が多くなります。この「微笑」は非常にかわいいので、お母さんもお父さんもあやさずにはいられないでしょう。あやしてもらうことによって、赤ちゃんはそれを楽しむようになり、よく笑う赤ちゃんになります。また、1人遊びに飽きたときには、お母さん・お父さんに抱いてもらいたがります。そのときに抱いてあげますと、非常に喜びます。そして、家族といっしょにいることを楽しむ心が発達します。

このようにして育った赤ちゃんには「笑い」が多く、赤ちゃん言葉がふえていきます。そして、生後6〜8ヶ月ごろに目がはっきりと見えるようになりますと、必ず「人見知り」が現れます。「人見知り」は、見慣れていて信頼のおけるお母さん・お父さんのイメージが子どもの心に刻まれたことを意味します。そして、見慣れない人を見たときには不安を感じて、信頼のおけるお母さん・お父さんにしがみつく状態です。もし、生後半年以後に「人見知り」が表れない赤ちゃんがいたならば、情緒の発達がおくれており、お母さんとの間の情緒的な結びつきができていないことを考えて、抱いたりあやしたりすることが必要です。

子どもが、お母さんの温かい心を受け取る最も大切な年齢は、1歳から3歳までです。子どもが、何か不安を感じたりすると、すぐにお母さんのひざに乗ってきますし、夜間には添い寝を求めます。そのようなスキンシップ、つまりからだでの甘えを受け入れてもらうことによって、子どもの情緒は発達し、自分の感情をありのままに表現する子ども、つまり、子どもらしい子どもになるのです。

以上の情緒の発達について考えてみますと、感情を外に出さない子どもには、お母さんとの間で情緒的な関係が成立していないし、情緒を表現することを断念していると言ってよいでしょう。しつけとか勉強第1に育てられてきた場合には、このような子どもらしくない子どもができ上がります。

親子の遊びで笑いを取り戻しましょう

しばらく、勉強とかしつけは放り出してしまいましょう。抱っこ、おんぶ、添い寝などのスキンシップを十分に実現しましょう。初めは抵抗感を表すかも知れませんが、その楽しさを知ると、一時はべたつきの状態になるでしょう。また、お父さんにも協力してもらって、ふざけたりおどけたりする遊びを始めましょう。子どもには「笑い」が多くなりますし、一時的にはハメをはずすような行動を表すでしょう。エッチなことを言って楽しむ子どもにも変わります。それが子どもらしい子どもです。

勉強ができても、情のうすい子どもにしてしまっては、社会生活をする上で非常に不幸です。勉強がよくできなくても、温かい心の持ち主に育てることが、幸せな生活と結びつくものです。

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