動作がのろく、はきはきしません。何とかしたいのですが
| 「小学校1年生の男の子ですが、動作が極端におそいのです。ランドセルの止め金をかけるのに、今でも5分以上もかかり、夏休み中も昆虫を採ると言って出かけても、虫に逃げられては泣いて帰ってきました。歩くのも遅く、返事をはっきりせず、すべてはきはき致しません。機敏とまでいかなくても、子どもらしいふつうの動作ができる子どもにしたいと思うのですが、どのように気をつけて指導をしたらいいでしょうか。男の子ですので、いっそう心配しております。」 過保護な育て方は子どもの動作をのろくします 動作がのろい―という相談を受けたときに、お母さんに質問することは、1日の生活の中で、何か動作が早いとか、ふつうの動作ができるとかがないのですか―ということです。それは、好きなお菓子を出したときには飛んでくるとか、どこかへ出かけるというときには早くイ衣類を着るということであってよいのです。もし、1つでも2つでも動作の早い部分があれば、本当は動作ののろい子どもではないと言えるわけです。 また、動作がのろいのに気づいた年齢はいつごろでしょうか。はいはいやあんよなどのからだの移動運動ができるようになったのがいつで、そのころの子どもの状態はどうだったのでしょうか。もし、移動運動ができるようになった年齢がふつうだったというのであれば、その後になんらかの大きな病気でもしない限りは、脳神経系には故障がないと言えましょう。とくに歩行の開始が1歳2、3ヵ月ごろというのであれば、運動機能の発達は順調に営まれるはずの子どもであることがわかります。 また、はいはいやあんよなどするころには、とくに動作が活発で、しかもあれこれと「いたずら」をして回るものですが、そうした状態が見られたということであれば、これももともと動作のにぶい子どもではないということになります。 以上のいろいろなことから、もともと動作のにぶい子どもではない―ということになれば、環境の条件、つまり育て方に問題がなかったかについて、反省してみなければなりません。 その点で第1に考えてみなければならないのは、過保護です。過保護とは、手を貸してしまうことの多い育て方です。例えば、あんよを始めたときにはよく転ぶものですが、転んだためにけがでもさせたら大へんと、抱っこやおんぶをしてしまったり、2歳ごろから自分で衣類を着ることに興味をもち、裸のままシャツを着ようとしているときにかぜを引かせてはいけないと、さっさとお母さんが着せてしまうような育て方をいいます。歩くにも衣類を着るにも、それがじょうずに早くできるようになるためには、何回も何回も練習をする必要があります。その練習が不足している子どもに、「さあ、小学校1年生になったのだから1人でやりなさい」と言っても、子どもの動作がのろいのは当然のことと言えます。しかも、過保護の中で生活してきた子どもには、いつの間にか、「結局はお母さんがやってくれるもの」という気持が育ってしまっていますから、ゆっくりゆっくりしているわけです。つまり、技術が未熟であるうえに依存心が強くなっていますから、動作がのろいのです。おそらく、お母さんとしては、これまでに何度か、子どもの独立心を育てようとして、子どもに「まかせて」みようとはしたと思います。ところが、見ていられなくなって、結局はお母さんがやってあげてしまう―ということのくり返しではなかったかと思います。 せきたてたり叱ったりしていませんか さらに、もう1つの育て方の誤りが加わっていることがあります。それは、動作ののろいことを心配し始めたお母さんが、「早く、早く!」と子どもに声をかけることです。子どもにしてみれば何とかして自分でやろうと努力しているのに、お母さんからせき立てられますと、かえってうまくいかなくなって、時間がかかってしまいます。しかも、子どもが一生懸命やった結果がお母さんの気に入らなくて、お母さんから叱られるようなことがありますと、子どもは自信を失い、劣等感のかたまりのようになってしまうことがあります。つまり、いろいろな条件が悪循環となり、雪だるまのようにふくれ上がって、極端に動作ののろい子どもになっていることが考えられます。 そこで、悪循環を断ち切るために、第1に、どんなに動作がのろくても、手を貸さないように、そして、「早く」とせき立てないようにがまんをして、すべてを子どもに「まかせて」、子ども自身でそれを仕上げたら、それを「ほめる」ことです。何よりもお母さんの忍耐が必要です。そのように育てていきますと、日時はかかりますが、少しずつ動作が早くなってきます。絶対に急がないことです。 |
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