落ちつきがなくて困ります。落ちつきのある子にするにはどうしたら

「現在保育所に通っている5歳の長男ですが、少しも落ちつきがありません。先日発表会がありましたので、いってみましたら、音楽など皆が楽しんで歌っているとき、うちの子はキョロキョロして、手をもじもじさせたり足を動かしたり、一刻もじっとしておりません。どうしたら落ちつきのある子になるでしょうか。」

お母さんとの心の結びつきが欠けているのでは・・・・・・

落ちつきがないというご質問を受けたときに、第1にうかがうことは、どのようなときに注意を集中して遊ぶことができますか―ということです。水いたずらとか泥んこ遊びなら夢中になってする―というのでしたら、そのお子さんは落ちつく力をもっているということになります。

この点をはっきりさせておかないと、子どもの扱いを誤ってしまいます。それは、落ちつかないというお母さんの訴えを聞き、多動という言葉を使って、脳障害という診断を下している医者が少なくないからです。そのような医者は、子どもを薬漬けにしてしまいます。その薬には催眠作用がありますから、子どもはぼんやりしてしまいます。しかし、それは落ちついたように見えますので、医者は薬の効果があったと診断してしまいます。ところが、いっしょに遊んでみますと、意欲がなかったり、足もとがふらついていることさえあるのです。このような状態では、子どもらしく生きることができません。このまま成長しますと、思春期以後になっていろいろな問題が生じます。その1つに登校拒否があります。中・高校生の登校拒否児の中に、幼いころに微細脳障害と診断されて、薬を飲んでいたという子どもがいます。

落ちつきのない子どもについて考えてみなければならないことは、情緒が不安定ではないかということです。この情緒については、外部から観察するよい方法がないのですが、落ちつきがない、攻撃的である、無気力―といった状態が見られれば、私は、一応、情緒不安定ではないかと考えます。そして、これまでのお母さんとそのお子さんの関係についてあれこれとうかがうようにしています。それは、お母さんとの間で情緒的な関係が不十分な子どもは、心に基地をもっていませんので、情緒が不安定になっているわけです。

まず、生後6、7ヵ月ごろから「人見知り」が現れたかどうか。「人見知り」こそはお母さんとも間の情緒的な結びつきができ、お母さんに対する信頼感情をもった証拠です。「人見知り」がないということは、お母さんとの間の情緒的な結びつきができていない証拠と言えるのです。

また、1歳から3歳にかけて、何かにつけてお母さんにからだで甘えたかどうか、つまり、ひざに乗ったり、おんぶを要求したり、添い寝を求めたかどうか。そして、それに対してお母さんが応じてあげたかどうか。こうした子どもとお母さんの関係の中で、子どもの情緒は安定し、いろいろなことにじっくりと取り組むことができるのです。

そこで、過去において「人見知り」がなく、からだで甘えることをしなかったという子どもであれば、スキンシップの実現に努力しましょう。うちの子どもはスキンシップを喜ばない―と言うお母さんがいますが、それほどになるくらいに、お母さんからスキンシップを拒否されてきたと見てよいでしょう。どの子どももお母さんにからだで甘えることが好きなのです。

スキンシップで情緒を安定させましょう

からだでの甘えが始まりますと、一時的に、お母さんにベッタリという状態が生じます。それだけ過去におけるスキンシップが少なかったことを意味します。ですから、ためらわずに甘えさせてよいのです。子どもの情緒が安定しますと、必ず、お母さんにベッタリといった状態が減少し、戸外でいきいきと遊ぶ子どもに変わります。それには、3ヵ月から半年はかかります。

なお、たまたまお母さんが発表会にきてくれたので、うれしくて落ちつきのない状態を現したり、ふざけたりしますから、ふだんの園生活の中で子どもがどのような状態にあるのかを先生に聞いてみましょう。ふだんは落ちついているということであれば、発表会の日だけ興奮したというわけです。家庭でも気になるほどでないということであれば、その点がはっきりするでしょう。

なお、自制心のない子ども、つまりわがままな子どもは、他人に落ちつくように要求されても、それができません。そのような子どもの家庭には、子どもの思い通りにさせたり、菓子や玩具を与えたりする人がいるものです。その点に気づいたならば、家族のものが協力し合って、子どものがまんする力を育てるようにしましょう。

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