●がんこな肩のこりも痛みも手の人さし指と中指をまとめてグイグイそらせば治る

★肩をもんでも肩こりは治らない

 「肩に負担をかけるような仕事はしていないのに、それでも肩がこってたまらない」と訴える人がたくさんいます。これはどういうわけでしょうか。

 一日の生活の中で、ハシより重いようなものを持たなくても、実は肩こりが起こってくるのです。何もしなくても、肩の筋肉は酷使されているからです。

 背中には、後頭部、首、背中へと続く僧帽筋という、大きな筋肉があります。とくに僧帽筋の上半分は、肩甲骨を持ち上げる役めを果たし、肩甲骨を介して、常に重い腕を釣り上げています。人間が2本足で立つようになってから、この筋肉は寝ているとき以外、働きつづけているのです。

 顔を洗う、食事をする、洗濯をする、デスクワークをするなど、手を使う動作はすべて僧帽筋を介することで、初めてできます。したがって、何もしていないようでいても、僧帽筋は緊張を強いられて、酷使されています。これが、肩こりの大きな原因となります。

 たとえば、体操のような運動をすると、筋肉は緊張と弛緩(ゆるむこと)をくり返して、血行がよくなります。ところが、運動をせず、重い腕をただぶら下げているだけだと、筋肉が緊張したままになり、血行不良が生じ、疲労物質が筋肉にたまってきます。しかも、疲労物質がたまりすぎてしまうと、筋肉がカチカチに硬くなって痛みを訴え、肩こりが起こってくることになります。

 実は、疲労物質がたまって、固まってしまったような筋肉をほぐすのは、容易ではありません。肩をもんだくらいでは、表面的な筋肉の緊張をほぐすだけです。いちばん効果的なのは、これからご紹介する背伸びをしながら、手の人さし指と中指を同時にそらせる指そらしです。これを行なうと、硬くなった僧帽筋の緊張が一気に取れて、肩こりがその場で消失します。

※四十肩の人はできる高さで行なう

 やり方を具体的に説明しましょう。

@ 足を肩幅に開いて立ち、体の前で右の手のひらを下に向けて人さし指を中指をそろえる。そろえた2本の指の手の甲側のまたの部分に左手の親指を当て、さらに左手の残りの4本の指で、そろえた2本の指をにぎる。

A 背伸びをしながら、左手の指で右手の人さし指と中指を同時に軽くそらしながら、腕をゆっくりと上げられるところまで上げていく。この動作を3回くり返す(急いで上げてはいけない)。

B 今度は左右の指を入れ替えて、同じ要領で右手の指で左手の人さし指と中指をそらす。同じく3回くり返す。

コツは、無理に指をそらさないようにすることです。最初は、指があまりそらないかもしれません。しかし、指をそらしながらゆっくり上げていくと、だんだん指がそるようになっていきます。指がよくそるようになったときには、僧帽筋の緊張が一気にほぐれて、肩こりはその場で消失していくのです。

 56歳の会社員Tさん(男性)は、もう30年以上もひどい肩こりに悩まされてきました。これまで、ありとあらゆる方法を試したといいますが、効果は一時的で、長続きしませんでした。そこで、肩こりを徹底的に治す方法を求めて、私のところを訪れました。そこで教えてあげたのが、手の指そらしでした。

 とはいえ、まさか指をそらしたぐらいで、がんこな肩こりが治るとは、Tさんも信じていなかったようです。それが、指をそらしたとたんに肩が軽くなり、硬かった肩の筋肉がその場で軟らかくなったのです。さすがのTさんも、これにはビックリしていたようです。

 疑う人は、まず試してみてください。あっという間に肩こりがらくになってきます。

 なお、四十肩(または五十肩)で困っている人も、ぜひいまご紹介した手の指そらしを行なってください。もちろん、四十肩の人は大きく腕が上がらなくてもかまいません。上げられるところまで、動くところまで腕を上げて指をそらしていると、硬くなっていた筋肉がやわらいで、腕の可動範囲がさらに広くなっていきます。毎日続けていると、気がついたときには四十肩が消えているでしょう。