『環境は遺伝する』

虐待をしている親の中には、自分自身が子供の時に虐待か、それに類する体験を受けていた人がいます。以前、「環境は遺伝する」ということを述べましたが、虐待に関して言えば、子供時代に負った心の傷が、自らが子供を育てるようになるころにうずきだすことがあります。そんな心理状況を「虐待の世代連鎖」と呼ぶそうです。
幼少期に何らかの虐待を受けて育った親が、わが子に虐待を繰り返す確率は、30%とも、50%ともいわれています。とても残念な現象です。心の中に負った傷は、とても大きな心理的なギャップをその人に与え、人生の中の大事な時期にマイナスの影響を及ぼすのです。その世代連鎖を断ち切るのは、問題が心の中で起こっているだけに容易ではないと思います。でも、家族や社会全体がこの事実に目を向けて、本人とともに立ち向かう必要があるでしょう。
私たちは積極的に善い環境を築き上げていく必要があります。自分の心の中から始めることが大切です。なぜなら心で思うことが、その人の言葉や態度や行動に表れてくるからです。家庭の中にあって、親は環境整備の責任者です。青少年育成国民会議のスローガンは正にそのことを強調しています。それは『大人が変われば、子供も変わる』です。長崎県青少年育成県民会議のスローガンはそれを受けた形で、『今こそ、大人が変わるとき』となっています。環境浄化を行うためには、今の世代の中心となっていてその責任を担うべき私たち大人が自分を見つめ直し、悪い世代連鎖を引き起こさないように、心を配って環境を整えていくことが必要です。
善い世代連鎖を築くために、これからもしあわせな家族関係を築くあの手この手を皆さんと一緒に考え、生活に生かし、実践して、子供たちが善い環境を築く手助けにしたいと切に願っています。