夫婦は互いに愛と関心を示し合うという責任を負っています。

伴侶への虐待(防止策と対応策)

●防止策と対応策
1997年米国発行『Preventing and Responding to Spouse Abuse(伴侶への虐待の防止策と対応策)』より(著作権所有者には使用承認を受けております。翻訳は多少修正を加えております。)

はじめに
 伴侶に対する虐待とは、悪意をもって妻または夫に接したり、あるいは伴侶を不当に扱うことにより、からだやこころに傷を負わせたり、重大な罪を犯したりする行為です。伴侶に対する虐待行為はいろいろな形を取って現れます。不注意で気づかずに行ってしまうものもあれば、意図的で悪意に満ち、そして暴力を伴う虐待もあります。どのような形であれ虐待は不正な行為です。虐待行為はその対象となる人に重大な影響を与えるだけでなく、虐待を行う人自身にも深刻な影響を及ぼします。虐待行為は家族をも巻き込んで苦しめるものです。伴侶が虐待を受けていると、子供たちまでもが危険な状態に追い込まれることがあります。虐待されている親を見ている子供たちは情緒を傷つけられ、その影響は成人した後にまで尾を引くことが多いのです。いかなる形態を取るにせよ、それは悲劇であり、人の道に反するものです。

 
家族の中の成人、および関与するほかの人々は虐待を阻止し、傷ついた人を保護して助けを求める責任があります。虐待を受けた人には、家族をはじめ人からの思いやりに満ちたいたわりが必要です。あるいは専門家の援助が必要なこともあります。また、虐待している側も援助が必要です。虐待の事実を明るみに出さないことで、繰り返す場合が往々にしてあります。虐待を繰り返し犯す人の多くは、自分の行為が最終的な結果を招くところまで来ないと、なかなか変われません。家庭内で行われている虐待に、家族の一員または第三者が気づいた場合は、虐待を阻止できる立場にある人に、助言と援助を求めるべきです。

虐待行為の始まり
 子供への虐待行為と伴侶への虐待行為はいずれも、一見何でもないようなことから始まります。相手の能力や力量をけなしたり、四六時中批判的であったり、侮辱的な態度を取ったり、非難したり、話し合いを拒んだり、ごまかしたり、相手に罪悪感を抱かせたり、約束をしては破ることを何度も繰り返したり、おびえさせたり、肉体的な危害を与えると脅したり、理由もなく非難したり、器物を破壊したりすることなどを例として挙げることができます。

 相手を攻撃していながら、それに気づいていない人もいます。ある人々は自分の行為がどれほど大きな影響を与えるかを理解していません。しかし、虐待が行われていることに気づいたら、家族全員特に父親と母親は率先して自分たちが家族の一人一人とどのような関係にあるのかを調べてみなければなりません。何かの行為がだれかを傷つけていることに気づくだけで、行動を改めるようになる場合もあります。

伴侶への虐待に対する認識
 
伴侶に対する虐待行為には精神的虐待、肉体的虐待、性的虐待があります。
 精神的虐待には、絶えず避難すること、相手をばかにするような言葉を言うこと、不義による支配と強制、威嚇、不干渉、威圧、ごまかし、無視などが相当します。
 肉体的虐待には、押したり、首を絞めたり、引っかいたり、つねったり、監禁したり、たたいたりするなどの肉体的な暴力行為が含まれます。
 性的虐待には、精神的および肉体的なものがあり、性的いやがらせ、苦痛を加えること、力ずくで自分の意志を通そうとしたり、威圧したりすることが含まれます。

 伴侶に対する虐待行為は回を重ねるごとに過激になる傾向があります。口論や偶発的ないらだちが発端となって虐待行為へと発展することもありますが、一般的には怒りや脅し、ごまかし、肉体的または性的行動によって相手を支配しようとすることから虐待行為へと発展します。虐待行為が繰り返し行われる場合、虐待する人を満足させようとしたり、心の落ち着きを取り戻させようとしたり、あるいは理性に訴えようとしたりしても、虐待行為をやめさせることはほとんど不可能です。また虐待を行った人が謝罪したり、約束したりしても、それによって暴力行為が終わることはほとんどありません。

伴侶への虐待の防止
 ある専門家は既婚者に向けて次のように述べています。「わたしたち一人一人は別個の存在です。一人一人が個性を持っているのです。個性の違いを度外視して、お互いに尊敬することが大切です。わたしは長い間感じていたことなのですが、結婚生活における幸福とは、ロマンスのようなものではなく、むしろ伴侶が心に何の心配もなく、満ち足りた生活が送れるように配慮することだと思います。これには弱さや失敗を喜んで許すことも含まれます。」 結婚生活における問題のほとんどは、これらの原則を理解していないことから起きています。

 結婚生活において、どのような形であれ伴侶を服従させようとしたり、支配または強制しようとしたりすると、夫婦の関係にひびが入ります。協力関係にある夫婦がそれぞれに持つ感情や関心、好き嫌いは、同じように大切であり、相手から同じように尊重されるべきものです。

 夫婦はお互いの意思の交流、接する態度について、頻繁に評価してみることが必要です。そのための方法として、次のような質問を自分に問いかけてみるとよいでしょう。
●わたしは伴侶との関係で、ささいな事柄をうっとうしく感じていてもそのまま放置しておいて、やがて思いやりのない行動を取ったり、不親切な言葉をいったりしていないだろうか。
●わたしが心に感じている怒りは伴侶や子供たちと直接関係ないのに、わたしは家庭で不満を募らせて家族を傷つけるような言葉を言っていないだろうか。

 落胆や不満が原因となって生まれる思いやりのない行動や不親切な言葉は、虐待行為の初期の兆候となる場合があります。早急に改めておかないと、これらは家族を精神的、肉体的に苦しめる重大な虐待行為の温床となることがあります。
 
 虐待行為の兆候が認められたり、明るみに出た場合には、結婚生活からそれらを取り除き、家族が平安と喜びを得るために、継続して努力する必要があります。

伴侶への虐待に対応する
 虐待行為の犠牲者は最大の関心と助けを必要としています。家族の中の成人、親戚を含むその他の人々は虐待行為をやめさせ、安全を確保し、虐待行為を受けた伴侶が立ち直るようにあらゆる手立てを講じなければなりません。家族はまた、虐待を行った人の精神的、情緒的な必要に対処し、当人が改心して、健全な人物になるよう助けなければなりません。

 虐待行為に対する最善の対応方法は、暴力や虐待行為を許しておくわけにはいかないことを虐待行為の犠牲者と、関与する家族、友人がはっきりと述べることです。虐待行為がすでに日常的に行なわれている場合は、通常は犠牲者ですが、だれかがそのことをほかの人に知らせる必要があります。状況によっては、専門家を慎重に選んで犠牲者と加害者の双方にカウンセリングを受けさせる必要があるかもしれません。

コメント:虐待に関するご意見、ご感想があれば、お寄せ下さい。

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